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【糖尿病専門医が解説】低血糖の症状・原因・検査・対処法

2026/10/16
低血糖の症状・原因・対処法を解説するアイキャッチ画像。頭を抱えてつらそうな女性のイラストと、血糖測定器に表示された低血糖65mg/dLの数値、冷や汗・ふるえ・動悸などの症状アイコン、ブドウ糖やジュースでの対応方法を示すイラスト

糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、治療中には反対に血糖値が下がりすぎる「低血糖」が起こることがあります。

一般に、血糖値70mg/dL未満は低血糖として注意が必要な目安です。

低血糖になると、冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感などが現れます。さらに血糖値が低下すると、ぼんやりする、判断力が低下する、けいれん、意識障害などにつながることもあります。

糖尿病治療中の方だけでなく、まれに糖尿病以外の病気や薬が原因で低血糖を起こすこともあります。

この記事では、低血糖の症状や原因、検査、起こったときの対処法について、糖尿病専門医がわかりやすく解説します。低血糖は運動療法や食事療法とも関わりが深いので、あわせてご覧ください。

目次(タップすると開きます)

今、低血糖かもしれない方へ

冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感など、「低血糖かもしれない」と感じたら、可能であれば血糖値を測定してください。

血糖値が70mg/dL未満の場合や、血糖値を測れなくても低血糖が強く疑われる場合は、すぐにブドウ糖を摂取します。

目安は次のとおりです。

  • ブドウ糖 10g
  • またはブドウ糖を含む飲料 150〜200mL

摂取しても症状が続く場合は、15分程度たってからもう一度ブドウ糖を摂取します。

症状が改善したら、食事の時間であれば早めに食事をとりましょう。

なお、アカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどのα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)を服用している方は、砂糖ではなく必ずブドウ糖を使用してください。

意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない、けいれんしているなど、本人が安全に飲み込めない状態では、無理に食べ物や飲み物を口から与えてはいけません。すぐに救急車を呼びましょう。

低血糖とは?

低血糖とは、血液中のブドウ糖が必要以上に少なくなった状態です。

健康な人では、食事をしていない時間でも、肝臓からブドウ糖を出したり、さまざまなホルモンが働いたりすることで血糖値が一定の範囲に保たれています。

一方、糖尿病の薬やインスリンの作用が強すぎる場合などには、血糖値が必要以上に下がってしまうことがあります。

一般には、血糖値70mg/dL未満が低血糖に注意して対処する目安とされています。

ただし、低血糖の症状が現れる血糖値には個人差があります。また、血糖値が急激に下がった場合などには、70mg/dL以上でも低血糖に似た症状を感じることがあります。

大切なのは、数値だけでなく、自分に起こりやすい低血糖の症状を知っておくことです。

低血糖の症状

低血糖では、血糖値の下がり方や程度によってさまざまな症状が現れます。

低血糖の症状の進行段階を示すイラスト。初期症状(冷や汗・手のふるえ・動悸・強い空腹感)、さらに血糖値が低下すると(ぼんやりする・眠気・判断力低下)、重症になると(けいれん・意識障害)の3段階

血糖値が下がり始めたとき

体は血糖値を上げようとしてアドレナリンなどのホルモンを分泌します。

そのため、

冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感、不安感、顔色が悪くなる

などの症状が現れることがあります。

さらに血糖値が低下すると

脳に必要なブドウ糖が不足し、

頭痛、眠気、目のかすみ、ぼんやりする、集中力や判断力の低下、いつもと違う行動

などが現れることがあります。

さらに重症になると、けいれんや意識障害、昏睡につながることがあります。

低血糖の最初の症状は人によって異なります。

「自分の場合は、手がふるえる」
「急にお腹がすく」
「冷や汗が出る」

など、自分に起こりやすい症状を知っておくと、早い段階で対処しやすくなります。

症状を感じない「無自覚性低血糖」

低血糖を繰り返していると、血糖値が下がっても冷や汗や動悸、手のふるえなどの警告症状を感じにくくなることがあります。

これを無自覚性低血糖といいます。

糖尿病による自律神経障害がある方でも、低血糖の症状が出にくくなることがあります。

症状がないまま血糖値がさらに低下すると、本人が気づかないうちに意識障害などの重症低血糖に進んでしまう可能性があります。

「血糖値を測ると低いことが多いのに、ほとんど症状がない」という場合には、一度主治医に相談してください。

低血糖を起こしやすい糖尿病薬

低血糖は、糖尿病治療中の方では、薬の作用と食事・運動のバランスが崩れたときに起こりやすくなります。特に注意が必要なのは、インスリン製剤や、一部のインスリン分泌を促す糖尿病薬を使用している方です。

糖尿病の薬は、種類によって低血糖の起こりやすさが異なります。

特に低血糖に注意が必要なのは、

インスリン製剤、SU薬(スルホニル尿素薬)、速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

です。

SU薬にはグリメピリド(アマリール)、グリクラジド(グリミクロン)など、グリニド薬にはミチグリニド(グルファスト)、レパグリニド(シュアポスト)などがあります。

一方、ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、α-グルコシダーゼ阻害薬などは、単独では低血糖を起こしにくい薬です。

ただし、これらの薬でもインスリンやSU薬などと併用すると低血糖のリスクが高くなることがあります。

「自分の薬は低血糖を起こしやすいのか分からない」という方は、主治医や薬剤師に確認しておきましょう。

糖尿病の薬について詳しく知りたい方は、糖尿病のお薬には何があるかもあわせてご覧ください。

低血糖を起こしやすい4つの場面

低血糖を起こしやすい4つの場面(食事がとれない、食事が遅れる、薬やインスリンの間違い、運動量が多い)を示すイラスト

1.食事が十分にとれないとき

風邪や胃腸炎などで食欲がなく、いつもより食事量が少ないのに、普段どおり糖尿病の薬やインスリンを使用すると低血糖になることがあります。

体調不良時に糖尿病の薬をどうするかというルールを「シックデイルール」といいます。

薬によって対応が異なるため、体調を崩したときの薬の使い方をあらかじめ主治医に確認しておくことが大切です。

2.食事の時間が遅れたとき

薬やインスリンを使用したあとに、仕事や予定などで食事の時間が大幅に遅れると低血糖になることがあります。

特に低血糖を起こしやすい薬を使用している方は、長時間食事がとれない可能性がある場合の対応について主治医に確認しておきましょう。

ブドウ糖を携帯しておくことも大切です。

3.薬やインスリンの量を間違えたとき

糖尿病薬を重複して飲んだり、インスリンの単位を間違えたりすると、低血糖を起こすことがあります。

特に高齢の方や認知機能が低下している方では、飲み間違いや注射の間違いが低血糖につながることがあります。

低血糖を繰り返す場合には、薬の種類や量だけでなく、薬を安全に管理できているかも確認する必要があります。

4.運動量が多かったとき

運動をすると筋肉がブドウ糖を使うため、血糖値が低下します。

そのため、普段より激しい運動や長時間の運動をした場合には、運動中だけでなく、運動後数時間から夜間、翌朝に低血糖を起こすことがあります。

特にインスリン治療を行っている方は注意が必要です。

長時間の運動や強い運動をする場合には、補食やインスリン量の調整が必要になることがあります。

糖尿病の運動療法に取り組む際にも、低血糖への対処法を確認しておきましょう。

糖尿病ではなくても低血糖になることがある

糖尿病の治療をしていなくても、低血糖になることがあります。

特に、食事をとらない状態が長く続いたときに起こる低血糖を空腹時低血糖といいます。

原因としては、

  • シベンゾリンなど一部の薬剤
  • 過度の飲酒
  • 重い肝臓病や腎臓病など
  • 血糖値を保つホルモンの異常
  • インスリンを過剰に分泌する腫瘍など

があります。

健康な方では通常、多少食事の時間が空いただけで重い低血糖になることはありません。

糖尿病の薬を使っていないのに、朝食前や空腹時に冷や汗、手のふるえ、動悸などを繰り返す場合には、思わぬ病気が隠れている可能性があります。

医療機関で一度相談してください。

低血糖の検査

低血糖を調べるうえで大切なのは、症状が出ているときの血糖値を確認することです。

自己血糖測定器を持っている方は、「低血糖かもしれない」と感じたときに血糖値を測定します。

低血糖を繰り返す場合や、夜間低血糖、無自覚性低血糖が疑われる場合には、持続グルコースモニタリング(CGM)を使って1日の血糖変動を詳しく確認することがあります。

一方、糖尿病治療をしていない方に低血糖が疑われる場合には、症状が起きる時間帯や食事との関係、飲んでいる薬、飲酒などについて詳しく確認します。

必要に応じて血液検査やホルモン検査、画像検査などを行い、原因を調べます。

まれに、一定時間食事をとらずに血糖値やインスリン、ホルモンなどを測定する「絶食試験」を行うこともあります。

低血糖になったときの対処法

低血糖になったときの対処法を示すフローチャート。血糖値70mg/dL未満または低血糖が疑わしい場合はブドウ糖10gを摂取し15分後に再確認、意識が悪く飲み込めない場合は口から与えず救急要請、α-GI内服中は砂糖ではなくブドウ糖を使用することを示す図

意識がはっきりしている場合

「低血糖かもしれない」と感じたら、可能であれば血糖値を測定してください。

血糖値が70mg/dL未満の場合や、測定できなくても低血糖が強く疑われる場合には、すぐにブドウ糖10gを摂取します。

ブドウ糖がない場合には、ブドウ糖を含むジュースなどを150〜200mL程度飲む方法もあります。

低血糖をすぐに改善させたいときには、チョコレートなど脂肪を多く含む食品は糖の吸収が遅いため適していません(ただし、それしかない場合はとらないよりはとった方がいいです)。

15分程度たっても症状が改善しない場合には、もう一度ブドウ糖10g程度を摂取します。

症状が改善し、食事の時間が近ければ早めに食事をとりましょう。

なお、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方では砂糖の吸収が遅くなるため、低血糖時には必ずブドウ糖を使用します。

糖尿病治療中で低血糖の可能性がある方は、外出時にもブドウ糖を携帯しておくと安心です。

低血糖を繰り返す場合

ブドウ糖を摂取して一度血糖値が上がっても、使用している薬やインスリンの作用が続いていると、再び低血糖になることがあります。

ブドウ糖をとっても症状が改善しない、または短時間のうちに低血糖を繰り返す場合には、医療機関を受診してください。

また、低血糖を繰り返す場合には、原因を確認して薬やインスリンの量、食事、運動、生活環境、サポート体制などを見直すことが大切です。

自己判断で薬やインスリンを中止せず、主治医に相談してください。

意識が悪い場合

低血糖によって意識がもうろうとしている、呼びかけに反応しない、けいれんしているなどの場合には、本人が安全に飲み込むことができません。

無理にブドウ糖や飲み物を口から与えると、誤嚥や窒息の危険があります。

すぐに救急車を呼びましょう。

低血糖の危険性が高い方では、あらかじめグルカゴン製剤を準備しておくことがあります。

グルカゴンには注射薬のほか、鼻から投与できる点鼻薬もあります。

ご家族が使用する可能性がある場合には、事前に医療機関で使用方法について説明を受けておきましょう。

低血糖を繰り返すと何が問題?

低血糖は、その場で具合が悪くなるだけではありません。

低血糖への不安から外出や運動を控えたり、必要以上に食事をとったり、自己判断で薬やインスリンを減らしたりすると、日常生活や糖尿病治療にも影響します。

また、重い低血糖を繰り返す人では、心臓・血管の病気や認知機能低下との関連も報告されています。

さらに、低血糖を繰り返すと低血糖の警告症状を感じにくい「無自覚性低血糖」につながることがあります。

そのため糖尿病治療では、単に血糖値を下げるだけではなく、低血糖をできるだけ起こさずに血糖値を管理することが重要です。

低血糖を繰り返している場合には、「仕方がない」と考えず、治療内容を一度見直しましょう。

よくある質問

Q.血糖値はいくつから低血糖ですか?

一般に、血糖値70mg/dL未満が低血糖として注意・対応が必要な目安です。ただし、症状が現れる血糖値には個人差があります。

Q.低血糖になったら何を食べればいいですか?

すぐに血糖値を上げる必要があるため、ブドウ糖10g程度を摂取します。ブドウ糖を含む飲料150〜200mL程度でも代用できます。チョコレートなど脂肪の多い食品は吸収が遅いため、低血糖への緊急対応には適していません。

Q.糖尿病でなくても低血糖になりますか?

糖尿病治療をしていない方でも、薬剤、過度の飲酒、ホルモン異常、肝臓や腎臓の病気、インスリンを過剰に分泌する腫瘍などによって低血糖になることがあります。糖尿病の薬を使っていないのに低血糖のような症状を繰り返す場合には、医療機関を受診してください。

Q.低血糖で意識がない人にジュースを飲ませてもいいですか?

いいえ。意識が悪く、安全に飲み込めない人に飲み物や食べ物を与えると、誤嚥や窒息の危険があります。無理に口から与えず、すぐに救急車を呼んでください。

まとめ

低血糖について大切なポイントをまとめます。

  • 血糖値70mg/dL未満は低血糖に注意する目安
  • 冷や汗、手のふるえ、動悸、強い空腹感などが代表的な症状
  • 低血糖が疑われたら、意識がはっきりしている場合はブドウ糖10g程度を摂取する
  • 症状が続く場合は15分程度たってから再度ブドウ糖を摂取する
  • α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している方は、低血糖時には必ずブドウ糖を使用する
  • 意識障害やけいれんがある場合には、無理に口から飲ませず救急車を呼ぶ
  • 低血糖を繰り返す場合には原因を確認し、薬やインスリン、食事、運動などを見直す

低血糖は、正しい対処法を知っていれば早い段階で対応できることが多い一方、重症になると危険な状態につながることがあります。

糖尿病治療中の方は、「自分にはどんな症状が出やすいか」「低血糖になったらどうするか」をあらかじめ確認し、ブドウ糖を携帯しておきましょう。


この記事の執筆・監修者

高崎市の乾小児科内科医院 院長 乾恵輔

乾 恵輔(いぬい けいすけ) 乾小児科内科医院 院長

【保有資格】

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
  • 日本循環器学会認定 循環器専門医
  • 日本内科学会認定 総合内科専門医

院長よりメッセージ: 低血糖は「気づいて、すぐ対処する」ことが大切です。低血糖を繰り返している場合には、単にブドウ糖で対処するだけでなく、なぜ低血糖になったのかを確認することも重要です。「最近、低血糖が増えた」「自分では低血糖に気づきにくい」「薬をこのまま続けてよいのか心配」など、気になることがあれば診察の際にご相談ください。


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