咳止めの飲み薬が全国的に不足しています
日に日に寒くなり、すっかり冬の装いです。
例年にみない早期からインフルエンザが流行していますが、寒さが増してくるとますます体調を崩す患者さんが増えることが心配されます。
さて、「つらい咳」を訴えて来院された患者様には必要に応じて咳止めの飲み薬を処方していますが、この咳止めが全国的に不足しています。
当院は院外処方を行っていますが、最寄りの薬局さんに伺いますと「一般的な咳止めは全く在庫がなく注文しても入ってこない状況」とのことで、従来通りの処方ができていないのが実情です。
咳止めに限った話ではありませんが、お薬の在庫管理は苦労されているようで、最寄りの薬局さんは閉院後も夜遅くまで薬剤調達の作業をされており、頭が下がる思いです。
背景には医療費抑制のため、国策としてジェネリック医薬品の使用率を大幅に増やしたことがあります。2005年に薬事法が改正され、企業の新規参入などがしやすくなったことで、ジェネリック医薬品の割合は2009年に35.8%だったのが、2021年には79%と、およそ8割になっています。

急激な需要増加に対応するべくジェネリック医薬品メーカーは本来の生産の雨量を超えて生産しました。
その反動で、2020年以降、ジェネリック医薬品メーカーによる製造工程や品質管理の不正が相次いで発覚。これまで10社以上が業務停止命令や改善命令を受け、生産量が減少しました。その結果、現在いろいろな医薬品の不足が生じています。
また、医薬品メーカーが販売する薬の値段は政府によって決められますが、ジェネリック内服薬の去年の薬価は2012年と比べて53.5%とほぼ半額で、下がり続けています。
お薬が安くなることは患者さんにとってはいいことです。
しかし薬価が下がり続け、ジェネリック医薬品のメーカーは設備投資にお金をかけることができず、限られた設備で多くの種類の薬を製造しています。そのため、薬の需要が増えたからといって製造ラインに余裕がないため、簡単に製造量を増やすことが難しいのが実情なのです。
近年の物価高騰などによる原材料費などの値上がりにより原価が6割から8割を占め、作れば作るほど赤字というジェネリック医薬品も出てきています。
風邪で病院にかかった時に、1つ1つのお薬の値段を細かく意識していない方も多いかと思います(しかもご自身が払っているのはその1〜3割なわけです)ので実感がないかもしれませんので実例を挙げてみます。
例えば、咳止めの代表薬であるメジコンの薬価は2013年11月現在で1錠5.7円(先発品もジェネリック医薬品も同額)。同系統の薬剤であるレスプレンが1錠5.9円、アスベリンも1錠9.8円と非常に低額です。
この値段では生産コストや輸送コストを考えたときに採算を取るのが難しいことは想像できると思います。
全国的な咳止め不足を受けて厚生労働省は10月18日に鎮咳薬や去痰薬のメーカー主要8社に、供給増加に向けたあらゆる手段による対応を要請しています。来年以降の薬価の見直しも検討されているようです。
とはいえ、生産量を急に増やすのは現実的には難しく、これから生産ラインの強化や調整なども行われていくと思いますが、当分この状況が続くことが予想されます。
病気で苦しんで来院された患者様にベストの処方ができず大変心苦しい状況ですが、ご理解・ご協力のほどよろしくお願いします。
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