片頭痛が劇的に改善!?片頭痛予防注射「エムガルティ」について

片頭痛は年間有病率が8.4 %(前兆のある片頭痛 2.6%、前兆のない片頭痛 5.8%)と報告(1)されており、特に30〜40才代女性の片頭痛の有病率は18%程度(2)と高く、およそ5人に1人は片頭痛ということになります。
頭痛のために日常生活に支障があるにもかかわらず、医療機関に受診する方は少なく、片頭痛患者のおよそ70%は一度も頭痛のために受診したことがないとされ、半数以上の方は市販の頭痛薬のみを使用していたとの報告(1)もあります。
確かに「軽い頭痛があるだけだし、わざわざ病院へ行くのは面倒」「頭痛薬を飲めば大丈夫」とお考えの方も多いと思います。
とはいえ、頭痛に悩まされている方が多いのも事実。今回は月に1回注射をすることで多くの方が改善効果を実感されている「エムガルティ(ガルカネズマブ)」について解説していきたいと思います。
片頭痛の治療
片頭痛の治療薬には、頭痛を止めるための急性期治療薬と、頭痛発作の出現を抑える予防薬があります。
日本頭痛学会が出している「頭痛の診療ガイドライン2021」では「片頭痛発作が月に2回以上、あるいは生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある患者では予防療法の実施について検討してみることが勧められる」とされています。
これまでは内服薬による予防薬は存在しましたが、毎日お薬を内服する必要がありました。予防薬の内服によって片頭痛発作のコントロールが改善する方も大勢いらっしゃるのですが、残念ながらコントロールがなかなか改善せず頭痛に悩まれる方もいらっしゃいます。
日常生活における支障が大きい割に軽視されがち…

片頭痛は見た目にはわかりづらい症状のため、周囲からは軽く見られてしまうことも多く、「頭痛があっても我慢している」こともしばしばです。17071名を対象に行った研究(3)では約3分の1の方が片頭痛の治療を求めることを躊躇しており、1ヵ月あたりの頭痛日数が15日以上の患者さんでは、労働遂行能力が49.9%に低下していましたが、片頭痛を理由に仕事を休んだ時間は全労働時間のうち6.2%でした。
片頭痛が起きる仕組み
片頭痛は脳内にCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質が増え、それが脳の血管に作用して起こるといわれています。片頭痛患者さんは、発作があるときにCGRPが過剰に放出されています。
エムガルティのはたらき
CGRPは、片頭痛を引き起こすとされている物質で、三叉神経という神経からCGRPが過剰に発現することにより血管拡張や神経原性炎症を介して片頭痛発作を引き起こすといわれております。

エムガルティは、CGRPのはたらきをおさえ、片頭痛発作が起こるのをおさえると考えられています
エムガルティによって得られる効果
①片頭痛日数が減る

反復性片頭痛患者を対象とした国内第II相試験(CGAN試験(4))によると、エムガルディ120mg投与群では1ヵ月当たりの片頭痛発症日数(6ヵ月平均)が3.6日減少し、プラセボ群(0.6日減少)と比較して有意に減少、その効果は6ヵ月持続していました。
さらに50%反応率(1ヵ月当たりの片頭痛日数がペースライン値より50%以上減少した患者さんの割合)はプラセボ群20.3%に対してエムガルティ投与群で49.8%と大きく低下していました。
②急性期治療薬を使う日数が減る

国内第II相試験(CGAN試験(4))では急性期治療薬を必要とした1ヶ月あたりの頭痛回数のベースラインからの変化量(6ヶ月平均)がプラセボ群-0.1日に対してエムガルティ投与群では-3.0日と減少していました。
③頭痛が続く時間が短縮する

やや個人的な話になりますが、私の現在高校2年生の娘は以前から頭痛に悩まされており、ひどい頭痛で学校を休むこともあったのですが(そもそも予防目的の内服薬を安定して使わないのにも問題はある)、エムガルティを始めたところ、症状が劇的に改善し、現在ほぼ頭痛を感じることがなく生活できています。
娘いわく「注射も多少痛いは痛いけど、頭痛より全然マシ」とのこと。
エムガルティの使い方
エムガルティは注射するタイプのお薬です。初回は2本、2回目以降は月に1本注射をします。

エムガルティの副作用
主な副作用(5)は注射部位疼痛(10.1%)、注射部位反応(紅斑、そう痒感、内出血、腫脹等)(14.9%)でした。
多くの場合、注射した日に出現し、数日以内に消失します。
エムガルティの費用
保険適応となります。初回のみ2本注射、以降は毎月1本注射です。
| 初回投与時 | 約27,000円(3割負担の場合) |
| 2ヶ月目以降 | 約13,500円(3割負担の場合) |
※このほか、診察料や検査料などの医療費が別途かかります。
エムガルティの処方には施設基準があり、どこの医療機関でも処方できるわけではありませんが、当院は処方に対応しております。
今までなかなか落ち着かない頭痛に悩まされていた患者さんにとっては劇的に症状を改善されてくれる可能性のあるお薬となっています。ご興味ある方はお気軽にご相談ください。
参考文献
(1) Sakai F, et al. Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997; 17(1):15-22
(2) Takeshima T, et al. Population-based door-to-door survey of migraine in Japan : the Daisen study. Headache 2004; 44(1):8-19
(3) Koichi H, et al. Comprehensive population-based survey of migraine in Japan: results of the ObserVational Survey of the Epidemiology, tReatment, and Care Of MigrainE (OVERCOME [Japan]) study: Courr Med Res Opin. 2021 Nov;37(11):1945-1955
(4) Sakai F, et al. Efficacy and safety of galcanezumab for prevention of migraine headache in Japanese patients with episodic migraine: A phase 2 randomized controlled clinical trial. Cephalagia report. 2020;3:1-10.
(5) エムガルティ 添付文書

