4月から新たに公費で受けられるHPVワクチン:シルガード9/ガーダシル・サーバリックスとの違いは?
現在、日本国内で使用できるHPVワクチンは、サーバリックス(2価HPVワクチン)、ガーダシル(4価HPVワクチン)、シルガード9(9価HPVワクチン)の3種類があります。
このうち、サーバリックスとガーダシルは定期接種として公費で受けられていましたが、2023年4月から新たにシルガード9も定期接種が可能となります。
今回はシルガード9の特徴、サーバリックスやガーダシルとの違い、実際の接種スケジュールなどについて解説していきたいと思います。
ヒトパピローマウイルス感染症(子宮頸がんなど)
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉によって生殖器やその周辺の粘膜にイボをつくるウイルスです。
HPVは遺伝子型によってタイプがわかれており、200種類以上あります。

16、18、31、33、45、52、58型などのHPVはがんになりやすく、子宮頸部(子宮の入口部分)に感染すると子宮頸がんに進行することがあります。そのほか中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの原因になります。
子宮頸がんの主な原因である16型と18型のHPVは、若年者に多いといわれています。女性の約80%が知らない間にかかったり、治ったりしています。
6型、11型のHPVは、外陰部や膣にやっかいなイボができる尖圭(せんけい)コンジローマや再発性喉頭乳頭種(再発性呼吸器乳頭種)などの感染症の原因となります。尖圭コンジローマも性交渉で感染、発症し、患者数は男女あわせて4万人とも言われています。
HPVに感染しても、すぐに癌になるわけではなく、ほとんどは自然に治りますが、一部は持続感染し、がんになります。HPV感染の約10%は細胞に初期の異常が見られ、約4%の方は前がん状態になり、普通はゆっくりと本当のがんに進行します。前がん状態からでも、自然に正常に戻ることが多いのですが、最終的に0.1~0.15%の方(毎年1~1.5万人)が子宮頸がんになります。
子宮頸がんは、毎年約2,800人が亡くなっている病気です。主ながんは中高年以上で増加しますが、子宮頸がんは20代前半の発症者もおり、30~40代までの若い患者が増加しています。
子宮頸がんの治療
子宮頸がんは、早期に発見し手術等の治療を受ければ、多くの場合、命を落とさずに治すことのできる病気です。
進んだ前がん病変や子宮頸がんの状態で見つかると手術が必要になります。病状によって手術の方法は異なりますが、子宮の一部を切り取ることで、妊娠したときに早産のリスクが高まったり、子宮を失うことで妊娠できなくなったりすることがあります。
HPVワクチン
さきほどもご説明したようにHPVは非常に多くのタイプがあるため、その全てをワクチンで防ぐのは困難です。
そこで特にがんになるリスクの高いタイプに対してワクチンを接種しています。
現在、国内では以下の2種類のワクチンが公費(自己負担なし)の対象となっています。
| 製剤名 | サーバリックス | ガーダシル |
|---|---|---|
| 予防するウイルスの種類 | 2種類 | 4種類 |
| 予防するウイルスの型 | 16型, 18型 | 6型, 11型, 16型, 18型 |
| 投与回数 | 3回 | 3回 |
| 副反応 (添付文書より) | 疼痛99.0%、発赤88.2%、腫脹78.8%、疲労57.7%、筋痛45.3%、頭痛37.9%、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛等)24.7%、関節痛20.3%、発疹5.7%、発熱5.6%、蕁麻疹2.6% | ・10%以上 注射部疼痛(67.8%)、注射部紅斑、注射部腫脹 ・1?10%未満 注射部位そう痒感、発熱、頭痛 |

*厚生労働省 パンフレット*1より
積極的な接種勧奨の一時差し控え(2013年6月)
日本では2013年4月よりHPVワクチンは定期接種となっていました。しかし、子宮頸がん予防ワクチン接種後に、接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛等が報告され、緊急に専門家による検討が行われました。
その結果、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでしたが、接種部位以外の体の広い範囲で持続する疼痛の副反応症例等について十分に情報提供できない状況にあることから、接種希望者の接種機会は確保しつつ、適切な情報提供ができるまでの間は、積極的な勧奨を一時的に差し控えるべきとされました*2。
安全性について
HPVワクチンは全世界の多くの国々で認可され、2020年3月時点で90カ国以上において予防接種プログラムとして実施されています。
HPV ワクチンの安全性については、WHO のワクチンの安全性に関する専門委員会が、世界中の最新データを継続的に解析し、2013年以後繰り返しHPVワクチンの安全性を示してきました。2017年7月のWHOのHPVワクチンSafety updateにおいても、「本ワクチンは極めて安全である」との見解を改めて発表しています。
個別接種の推奨再開へ
2021年11月12日に開催された専門家会議において、安全性について特段の懸念が認められないことが確認され、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ると認められました。
こうした専門家の意見を踏まえ、2021年11月26日に差し控えの状態を終了させることとなり、2022年4月から個別の勧奨(個別に接種のお知らせを送る取組)を順次行うことになりました。
シルガード9について
シルガード9は名前に9がついているように、9種類のウイルス型に対応しているタイプのHPVワクチンになります。
具体的には6型、11型、16型、18型に加えて、31型、33型、45型、52型、58型にも対応しています。
これらの型のうち HPV16、18、31、33、45、52、58の7つの型は、子宮頸がんだけでなく、女性の腟がんや男女ともに外陰がん、肛門がん、中咽頭がんなどの原因になります。
また、HPV6、11 型は男女の生殖器粘膜にできる良性のイボである尖圭コンジローマの原因の約90%を占めるとされています。
接種スケジュール
シルガード9は「初回接種」、「2ヵ月後」、「6ヵ月後」の3回(1回0.5mL)、筋肉内に注射します。

なおシルガード9の接種回数は、日本では3回となっていますが、海外では2回が主流です。
2023年2月27日に開かれた厚生労働省の専門家の部会では、接種回数を2回に減らしても、3回接種した時と同じぐらい抗体の値が上昇したほか、安全性についても特段の懸念はないとして、2回の接種でも可能にすることが了承されました。
対象となるのは、9歳から15歳未満の女性で、1回の接種量はこれまでと変わりませんが、接種回数が減るため、負担の軽減につながると期待されます。
サーバリックス、ガーダシルとの違いは?
サーバリックスとガーダシルはハイリスク型の中でも子宮頸がんの原因として頻度の高いHPV16型、18型に対して感染予防の効果があります。
日本では16, 18型の2つが子宮頸がんの原因の60-70%を占めると言われており、この2つの型に対してはサーバリックスとガーダシルで予防効果の差はないとされています。ガーダシルは、さらに尖圭コンジローマという病気の原因となる6型、11型に対しても感染予防効果があります。
シルガード9は、上記の6, 11, 16, 18型に加え、31, 33, 45, 52, 58型に対しても感染予防効果があります。

第45回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(2023年3月7日)資料より
サーバリックス、ガーダシルは子宮頸がんの予防効果が60-70%であるのに対して、シルガード9は90%以上の予防効果をもつことが期待されています*2。
サーバリックスやガーダシルを3回接種済みの人もシルガード9を接種すべき?
シルガード9の方が、ハイリスクHPVの感染をより広く予防できますが、サーバリックスやガーダシルでも頻度の高いHPV16, 18型の感染は予防できるため、シルガード9を追加接種する意義は限定的で世界的にも推奨されていません。
ただし4価HPVワクチンを接種後 1 年以上経過した症例に対して9 価HPVワクチンもしくはプラセボ(偽薬)を3回接種した研究*4では、9価ワクチンを接種した群て゛追加されたHPV31, 33, 45, 52, 58 型に対して免疫を新たに獲得することか゛示されています。
つまり、費用対効果等の観点から推奨はされていないものの、無駄とはいえない、ということだと思われます。
HPVワクチンの男性への接種
シルガード9の話題ではないのですが、世間的認知があまり高くはないものの、重要な話題だと思うのでHPVワクチンの男性への接種に関してここで触れておきます。
HPVワクチンは主に「子宮頸がんの予防ワクチン」として知られていますが、それ以外のHPVに由来する病気に対しても効果があることはすでにご説明した通りです。
例えば中咽頭がんという喉のがんは、従来飲酒や喫煙が原因と考えられていましたが、日本では約50%はHPVが原因となっていることがわかってきています*5。
海外では男性も定期接種の対象となっている国も少なくありませんが、日本では定期接種に関しては検討段階の状況です。接種自体は自費にはなるものの、2020年12月25日からガーダシルの接種が男性に対しても使用可能となっています(2023年3月現在サーバリックス、シルガード9は女性のみに使用が承認されています)。
まとめ
今回は4月から定期接種に新たに採用となる9価のHPVワクチン、シルガード9についてまとめてみました。今後はこちらのワクチンを用いた2回接種が主流となっていくことが予想されます。
*1 HPVワクチンについて知ってください?あなたと関係のある“がん”があります?(厚生労働省)詳しくはこちら
*2 HPVワクチンに関するQ&A(厚生労働省)詳しくはこちら
*3 子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために 日本産婦人科学会 詳しくはこちら
*4 Garland SM, et al. Safety and immunogenicity of a 9-valent HPV vaccine in females 12-26 years of age who previously received the quadrivalent HPV vaccine. Vaccine. 2015;33(48):6855-6864.
*5 T Hara, et al. Prevalence of human papillomavirus in oropharyngeal cancer: a multicenter study in Japan. Oncology. 2014;87(3):173-82.
乾小児科内科医院
c Inui pediatrics and internal medicine clinic

