世界初の週1回投与型インスリン製剤「アウィクリ」(インスリン イコデク)が日本で製造販売承認を取得
2024年6月24日、世界初の週1回投与型インスリン製剤であるアウィクリ注フレックスタッチ(インスリン イコデク)が承認されました。
このお薬は、従来1日に1〜2回の注射が必要だった持効型インスリンと同じく基礎インスリン分泌をサポートしてくれる注射剤ですが、週1回投与で効果が発揮できる点で画期的です。
週に1回=A weekly(ア ウィークリー)から製剤名のアウィクリが付けられたと思われます。
今回はアウィクリについてまとめていきたいと思います。
インスリン分泌について

インスリンは、膵臓のランゲルハンス島から分泌されるホルモンの一種で、血糖を下げるホルモンです。
心臓を動かしたり、呼吸をしたり、胃腸を動かすのに必要なホルモンは、すべて血糖を上昇させる作用があります。したがって、たとえ眠っている時間でも、血糖を上昇させるホルモンによって血糖値が上がりすぎないようにインスリンは絶え間なく分泌され、血糖上昇を抑えています。これをインスリンの「基礎分泌」と呼びます。
一方で食事をすると体内では血糖が急激に上昇し、これに反応してインスリンが急激に分泌されます。これを「追加分泌」と言います。
インスリン製剤の開発は、基礎分泌と追加分泌をなるべくヒトの生理的なインスリン分泌に近づけることを目指してきました。今回製造販売承認されたアウィクリは、体が本来もつ基礎分泌に最も近いと期待される基礎インスリン製剤です。
アウィクリの特徴
アウィクリは、インスリン構造に長い脂肪酸を付加し、3カ所のアミノ酸置換を行うことにより、アルブミンとの結合をさらに強固にして、クリアランスを低下させ、半減期を長くしたインスリンです。
投与後、速やかに血中アルブミンと結合し、血液中で不活性な貯蔵体を形成します。徐々に放出されていきます。そのため、ヒトにおける半減期は約1週間(155*1―164*2時間)と非常に長時間になっています。

週1回の投与ごとに徐々に貯蔵体が増えていき、3〜4回の投与でインスリンのクリアランスが投与したインスリン量と一致する定常状態に到達します。
ONWARDS試験
「効果が同様以上であるのであれば毎日打つ必要がある既存の持効型インスリンよりもいいに決まっている」と誰しもが思うわけですが、この疑問に応えるべく、様々な臨床シナリオに基づいてONWADRS試験としてアウィクリの有効性と安全性を検討する6つの試験(いずれも第Ⅲ相試験)が行われています。
以下に試験の概要を列挙します。
ONWARDS 1試験*3:インスリン治療歴のない2型糖尿病患者さんを対象に、インスリンを除く糖尿病治療薬の併用下でのアウィクリの週1回投与とランタス(インスリン グラルギン)の1日1回投与を比較(非劣性を検証)。
ONWARDS 2試験*4:基礎インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者さんを対象に、インスリンを除く糖尿病治療薬の併用/非併用下でのアウィクリの週1回投与とトレシーバ(インスリン デグルデク)の1日1回投与を比較(非劣性を検証)。
ONWARDS 3試験*5:インスリン治療を開始する2型糖尿病患者さんを対象に、アウィクリの週1回投与の安全性と有用性をトレシーバ(インスリン デグルデク)の1日1回投与と比較(非劣性を検証)。
ONWARDS 4試験*6:基礎・追加インスリン療法で治療中の2型糖尿病患者さんを対象に、インスリンを除く糖尿病治療薬の併用/非併用下でノボラピッド(インスリン アスパルト)を併用した場合のアウィクリの週1回投与とランタスの1日1回投与を比較(非劣性を検証)。
ONWARDS 5試験*7:インスリン治療歴のない2型糖尿病患者さんを対象に、アプリによる推奨投与量の情報提供を用いることで、アウィクリの有用性および安全性を評価。
ONWARDS 6試験*8:成人1型糖尿病患者さんを対象に、ノボラピッドの併用下でのアウィクリの週1回投与とトレシーバの1日1回投与を比較(非劣性を検証)。
ONWARDS 1試験
アウィクリとランタスを比較検討したONWARDS1試験についてもう少し詳しくみていきましょう。
この試験では主要評価項目を「ベースラインから52週までのHbA1cの変化量」とし、ランタスに対するアウィクリの非劣性を検証しています。

その結果、非劣性だけでなく、ランタスに対するアウィクリの優越性も示されました(52週間後のHbA1cの減少がアウィクリで-1.55%、ランタスで-1.35%)。
注射を打ち忘れた時はどうする?
注射を忘れた場合は、気づいた時点で直ちに注射し、その次の注射は4日以上の間隔をあけてから行い、その後は新たな開始日と同一曜日に注射することとなっています。

インタビューフォーム*9より
いつ頃発売?
海外では2024年3月にスイス及びカナダで承認され、スイスでは先月末から発売開始となっているようですが、8月1日時点で日本での発売日は未定となっています(多くの需要が想定されることから安定供給できるよう生産しているところのようです)。
針を刺す回数が減ることで患者さんや注射管理をサポートしているご家族の負担も減り、注射の受け入れや治療意欲にもよい影響を与えることが期待されます。
*1 社内資料:第 1 相臨床試験(NN1436-4422)(2024 年 6 月 24 日承認, アウィクリ®注 フレックスタッチ® , CTD2.7.2.3)
*2 Pieber TR, et al: Diabetes Obes Metab 2023;25(12):3716-3723
*3 Julio Rosenstock, et al: N Engl J Med 2023;389:297-308
*4 Athena PT, et al: Lancet Diabetes Endocrinol 2023;11(6):414-425
*5 Ildiko Lingvay, et al: JAMA. 2023;330(3):228-237
*6 Julio Rosenstock, et al: Lancet. 2023;10:401(10392):1929-1940
*7 Harpreet S bajaj, et al: Ann Intern Med. 2023;176(11):1476-1485

