内科医のできるまで(専門医取得後編)|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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内科医のできるまで(専門医取得後編)

2020.08.07

内科医のできるまで(専門医取得後編)

 
 

以前の記事で

と、医学部入学から専門医資格取得までの流れについてお話しさせていただきました。

今回は、専門医資格取得後のキャリアについてです。思わず長編になってしまいましたが、これで完結します。

 

1. はじめに

専門医取得の有無に関わらず、医師の就職先は、勤務医と呼ばれる大学病院あるいは市中病院か、開業医と呼ばれるクリニックが大半になります。

比率でいうと、おおよそ大学病院などの医育機関:クリニック:市中病院=1:2:3となります(2018年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況:厚生労働省より)。

その他のキャリアとしては、介護老人保健施設勤務、企業の顧問医師として働く産業医や保健所・厚生労働省などの役所関係もありますが、少数派になります。

主な就職先である大学病院、市中病院、開業医についてお話ししていきたいと思います。

 

2.大学病院

 

2-1. 大学病院は臨床だけやっているわけではない

大学病院というと「白い巨塔」のような世界を想像されるかもしれませんが、当たらずとも遠からず、といった感じでしょうか。

大学病院は「臨床・研究・教育」が3本柱と言われています。一般の方からすると医師の仕事=「臨床」=外来診療であったり、検査であったり、手術であったり、の部分になりますが、それ以外の仕事はイメージしにくいと思います。

大学病院の医師でも時間配分はいろいろで教育主体という医師は少ないと思いますが、臨床重視の医師、研究重視の医師は存在します。

特に研究部門に籍を置いている場合には、1日中研究室で実験、ということもあります。

臨床重視の度合いが強い医師は、研究にあまり時間をさかずにもっぱら診療にあたっていたりします。

こういった医師は「臨床能力(診断したり、治療したりする技術)」が高いことも多く、周囲から一目置かれたりもしますが、大学病院の医師としての評価項目には「研究実績」も重要なウェイトを占めていますので、出世には向きません。

 

2-2. 教育

大学病院とそれ以外の病院で大きく違う部分に教育があります。

医学部の4年生から6年生までがひっきりなしに実習に回ってくる、学生への講義もある、看護学生や救急救命士なども実習に来る、海外から留学生を受け入れる、研修医の指導もある、上級医になれば研修医以後の若手教育(これは一般の会社も変わらない部分でしょうが)もあります。

極端なことを言えば、学生の講義の予定があるために手術の開始時間が遅くなったり、検査の予定時刻が変わったりすることがある、ということです。

授業のための資料を準備したり、試験問題を作成したり、というのは日常業務の合間をぬって行うか、時間外に行うことになります。

 

2-3. 研究

一般の方からすると一番イメージしにくい業務かもしれません。医学に限らず学問は、先人の知恵と努力の積み重ねで今日があるわけですが、よりよい医療を求めて日々研究が行われています。

例えば、新型コロナウイルス感染症でどんな患者さんが重症化しやすいか、どんな薬が効きそうか。

こういった情報が世界中の医師の間でどうやって共有されるかといえば、最も信頼される情報は論文です。

日々診療を行いながら、診療の合間や多くは日常業務が終わった後に、データをまとめ、英語で論文を書きます。

もう少し細かくいえば、研究を行うためには通常、一般企業でいうところの企画書のような研究計画書、という書類を作成し、それを第3者も交えて行う倫理委員会という会議にかけ、倫理的に問題ないか検討され、承認をされてはじめて行えます。

かなりの量の書類を作成する必要があるのですが、これを日常業務のかたわら、基本的には金銭的な報酬はなしに、行います。

大学病院で出世を狙う場合には研究実績は重要で、有名な科学雑誌(引用文献数をもとに毎年ランキングされています)にどれだけ論文を載せたかが、評価されます。

大学で出世するかどうかは他の要素が絡む部分がありますが、有名な雑誌に多く論文を載せた研究者は、業界の注目を浴びることは間違いありません。

大学病院での出世に大事なのは臨床能力以上に研究業績です。巷でスーパードクターと呼ばれるような医師の場合でも

「臨床スキルの叩き上げで有名になった医師」と
「研究業績で有名になった医師」

がおり(世の中は前者ばかりだと思っていますが実際は違います。もちろん両者を兼ね揃える医師も存在しますが)、ある分野では有名だけど臨床能力はそこまで高くない医師、というのも存在するわけです。

昔より少なくなってきてはいますが 「研究実績は立派だが、手術を執刀して欲しくない外科の教授」 すなわち「神の手」でなく「紙(=論文)の手」といった先生も実在します。

 

2-4. 大学病院にいるメリット

大学病院で働くことのメリットは、最新の医療施設と医療技術という環境の中で仕事ができることでしょう。 専門医を取るにあたっても恵まれていることが多いです。

ただし、教育や研究にあまり興味がない医師にとっては、臨床以外の業務も多く負担に感じることも少なくないことから、研究を続けていくモチベーションがない医師は、専門資格などをとった卒後10年前後を目安に医局を辞めることが多いです。

 

2-5. 学位

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大学病院にいることのメリットの1つとしてあげられるのが学位=博士号です。 医学部は卒業した時点で修士、となるのですが、博士号(医学博士)をとるには基本的には大学院へ行く必要があります。

大学病院の場合は、少し特殊で、医局に属した状態で大学院へ入るので、逆にいうと医局に属さない状態で博士号をとることはできません。

さらにいえば、博士号をもらうためには、研究をし、論文を書き、研究実績をあげるのは当然のこと、所属する教授から「博士号をとってもよい」といったお墨付きをもらう必要があります。

ちなみに博士号は取ったところで通常給料が上がるわけでもないため(旧国立系の病院や大学病院などでの出世のためには必要)、「足裏の米粒」=取らないと気持ち悪いが、取っても食えない、などといわれています。

この例え、医学部独自のものだと思っていたのですが、調べてみたら他の学部でも言われているようです(笑)。

 

3.市中病院

大学病院やその附属を除いた大半病院が市中病院になります。とはいえ、国立病院機構や国立系などは研究機関の一面を兼ね備えており、やや大学病院よりの機関といえるかもしれません。

病院にもよりますが、一般的には研究よりも臨床に重きをおいているため、「医学研究にはあまり時間をさきたくない」「臨床に集中したい」といった理由で選択する人も少なくありません。

また給与水準も大学病院よりも高く、就職先の選択肢の幅があることから自分にあった病院を選びやすい側面もあります。

 

4. 開業医

開業医は、自分でクリニックをつくるか、親族や知人から既存のクリニックを継承するか、引退する第3者から継承するか、などして病院勤務から独立してはじめます。

ホテルや料亭で腕を磨いた料理人が独立して自分で店を持つのに似ているかもしれません。

勤務医と異なり、多くは自らが経営者となることから、自分の理想とする医療を自分にあった勤務体型で行うことができます。

日本医師会の「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」によれば、新規に開業する医師の平均年齢は41歳で、ある程度キャリア積んだ上で開業することが多いのがわかります。

開業医は経営者となりため、診療業務だけでなく、「経理・会計」や「人事」といったクリニックの運営に関わる業務もこなす必要があります。

全く畑違いの仕事を行なっていく必要があること、運営がうまくいかなった場合のリスクも伴うことなどから勤務医を続けるケースも少なくありません。

また、勤務医時代は手術や検査など大人数で重症な病気や大掛かりな医療に取り組んでいても、同規模の医療はクリニックでは難しいため扱う「医療の違い」に戸惑いを感じることもあります。

とはいえ、勤務医と違い、開業医は自分で定年を決められるため、人生100年時代においてはライフプランをたてやすく、自分にあった働き方ができるメリットあります。

私は大学病院勤務、一般病院勤務、開業医、といままでお話しした全ての職場を経験していますが、それぞれに良さや大変さがあります。

現在は、開業医として勤務していますが、開業医の1番の魅力は「患者さんとの距離が近い」ことではないかと思っています。

勤務医の場合、通常外来診療は週に1、2回程度ですが、大半の開業医の場合、診療日は全て外来診療を行います。

転勤などもないため、何十年も通院されている患者さんなどもおり、「かかりつけ医」として長いお付き合いをしていく中で継続的に関係を築いていくことができるのです。

ずいぶん長くなってしまいましたが、これで終わりたいと思います。

 

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