オゼンピックは週1回投与のGLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)に分類される糖尿病注射薬で、6月29日に発売開始となりました。
2015年に登場したトルリシティ以来、日本では6番目のGLP-1受容体作動薬になります。
今回はオゼンピック(セマグルチド)の作用機序、従来のGLP-1受容体作動薬との比較についてご紹介します。
実は登場まで苦労した薬だった
元々、オゼンピックは「皮下注2mg」製剤が2018年3月23日に承認されていました。
オゼンピックは通常、週1回、0.5mgを維持用量として皮下注射で用いますが、当時承認された2mg製剤は4週間分が含有されていることになります。
しかし、新薬には「14日間処方制限ルール」というものがあり、通常発売後1年以内は最長14日分までしか処方できません。
そのため、承認されたものの、「14日間処方制限ルール」に抵触してしまうため、販売を見送り、少量規格を再開発することになりました。
そして2年の時を経て、今回1本ずつ使い切りの製剤として改めて登場することになったのです。
オゼンピックの作用機序
オゼンピックはGLP-1受容体作動薬に分類されるお薬です。
GLP-1はグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide-1)の略で、インスリンの分泌を促進させるホルモンです。
GLP-1は食事をとると腸管から分泌され、
などの働きがあります。
GLP-1はDPP-4と呼ばれるタンパク質によって速やかに分解され、数分で効果が失われてしまいます(余談ですがこのDPP-4の働きを抑えるDPP-4阻害薬が現在日本で一番処方されている糖尿病治療薬です)。
そこでオゼンピック(セマグルチド)に代表されるGLP-1受容体作動薬は、GLP-1のアミノ酸配列を改変させDPP-4の分解を受けにくくしています。
そのため、投与されると生体内で長時間作用するのが特徴です。
また、GLP-1は血糖値が低い時にはインスリンの分泌を促進しないため、生体内に長時間滞留しても低血糖になる危険が低くなっています。
さらに、胃排泄遅延と食欲抑制によって、体重減少効果も示唆されています。
用法・用量
通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射します。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量します。
週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができます。
つまり、
ということになります。
副作用
主な副作用として、薬剤承認時の研究からでは、悪心(15.1%)、下痢(7.2%)、リパーゼ増加(6.7%)、便秘(6.4%)などが報告されています。
重大な副作用として低血糖や急性膵炎もありますので注意が必要です。
オゼンピックvs.トルリシティ…その結果は?
オゼンピックは国内では6番目となるGLP-1受容体作動薬ですが、週1回投与製剤としてはビデュリオン、トルリシティに続く3番目の登場になります。
従来GLP-1受容体作動薬ではトルリシティがシェアNo.1でしたが、トルリシティとオゼンピックの効果を直接比較したSUSTAIN-7試験についてご紹介します。
ちなみにSUSTAIN (Semaglutide Unabated Sustainability in Treatment of Type 2 Diabetes) 試験は、オゼンピックと種々の治療法との比較を行った第3相臨床試験(ランダム化比較試験)のシリーズなのですが、現時点でSUSTAIN 1-11(その他スピンオフ的な研究もあり)まで続いているスターウォーズもびっくりの長編ものになっています。
この中でトルリシティとの直接比較を行った研究がSUSTAIN-7になります。
本試験ではオゼンピック(0.5mgまたは1mg)とトルリシティ(0.75mgまたは1.5mg)をそれぞれ40週投与し、低用量/高用量別で有効性を比較しています。
その結果、オゼンピックの方が40週時点でのベースラインからのHbA1cの減少率と体重減少割合が有意に高かったことが示されています。
薬の種類 と投与量 |
オゼンピック 0.5mg |
トルリシティ 0.75mg |
オゼンピック 1mg |
トルリシティ 1.5mg |
---|---|---|---|---|
HbA1cの 変化率 |
-1.5% | -1.1% | -1.8% | -1.4% |
P<0.0001 | P<0.0001 | |||
体重の変化量 | -4.6kg | -2.3lg | -6.5kg | -3.0kg |
P<0.0001 | P<0.0001 |
この結果からはオゼンピックの方がトルリシティよりも効果が高そうな印象を受けます。
ただし、この研究で体重減少効果が高く得られたのはBMI>25の肥満患者さんであり、インスリン導入困難な高齢者にもGLP-1受容体作動薬が用いられている日本でも同様の評価ができるかは注視していく必要があると思います。
近々オゼンピック(セマグルチド)の飲み薬も登場予定
GLP-1受容体作動薬は現在、注射薬しか発売されていませんが、注射オゼンピックと同じセマグルチドを成分とする経口薬リベスサスが6月29日に承認されており、早ければ8月にも薬価収載される見通しとなっています。
発売時期は未定ですが、年内の発売が予想されています。
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