インフルエンザはようやく下火になってきましたが、冷え込みの厳しい日が続き、外に出るのが少しおっくうになりがちです。
別段予定がなければ家でゆっくり、というのも悪くはありませんが、あまり体を使わないでいるとだんだんと筋力がおちていってしまいます。
実は、筋力を保つことは健康で長生きするためにとても重要で、高齢化社会の課題として大変注目されています。
個人差はあるものの、40歳前後から徐々に筋肉量は減少し、その傾向は加齢とともに進んでいきます。特に下肢の筋力の低下が大きいことが報告されており、全身の中でも最も筋肉量の多い部分でもあることから、これを低下させないことはとても重要です。
中年期にあまり運動をしないでいると、知らず知らずのうちに筋肉量が減っていってしまう可能性があるのです。
筋肉量には、加齢と生活習慣が深く関わっており、筋肉の量が減ると、転倒したり、病気にかかったりするリスクが増えます。また、筋肉量が多いほど長生きできることもわかってきました。
上の図は75~84歳の高齢者の歩く速さと、10年後に生きている割合(これを10年生存率といいます)を調べた研究です。
ふつう以上の速さ(1.4m/秒以上)で歩けるグループと、歩行速度が遅い(0.4m/秒未満)グループとを比べると、10年生存率に3倍程度の開きがあることがわかったのです。
この結果は、歩くのが速い方、つまり筋肉量が多い方ほど長生きできることを表しています。すたすたとした歩行を維持することが、いかに重要かがよくわかります。
サルコペニアとは、加齢や生活習慣などの影響から、筋肉が急激に減ってしまう状態をいいます。Sarx(筋肉)とPenia(減少)というギリシャ語を組み合わせた造語で、1989年ごろにアメリカで提唱された比較的新しい概念です。
サルコペニアは65歳以上の高齢者に多く、特に75歳以上になると急に増えてきます。サルコペニアになると、
65歳以下の人でも、デスクワークや自動車中心の生活習慣などから、筋肉量が大きく減っている場合があります。
サルコペニアを自分でチェックすることもできます。
これらにあてはまる場合は、サルコペニアが疑われます。
筋肉低下を防ぐには、体を動かして筋肉を使うことが重要で、衰えやすい下肢の筋肉を鍛えるためにもっとも効くのはウォーキングです。
できれば1日20分のウォーキングを週に3日以上行うことから始めて、慣れてきたら時間と日数を増やしていくと効果的です。
なかなか時間が取れない場合は、週末1回だけでもやらないよりはずっといいです。
ウォーキングが難しい場合は、自宅でできる運動を行うとよいでしょう。
無理のない回数からはじめて、徐々に増やしていていきましょう。
<自宅でできる下肢の筋力トレーニング>
朝食前や入浴前など、行う時間を決めて、生活習慣の中に取り入れてしまうと継続しやすいです。がんばりすぎず、マイペースでいいので続けることが重要です。
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