健康診断などでコレステロールの異常を指摘されることは少なくありません。しかし、コレステロールが高いからといってすぐにすぐに症状がでる訳ではないので、いまひとつ実感がわかない方も多いのではないでしょうか。
について考えてみたいと思います。
コレステロールは、
といったように体の中で重要な働きをしている物質の材料として、なくてはならない成分で、7~8割は肝臓内で作られ、2~3割は食事から吸収されます。
不足すれば、だるくなったり、疲れやすくなったりしてしまうこともありますが多すぎると動脈硬化を進行させてしまうため注意が必要です。
コレステロールには、コレステロールを全身に運ぶLDLコレステロールと、使われなかったコレステロールを回収するHDLコレステロールなどがあります。LDLコレステロールが高い状態になると、血管に付着して酸化し、動脈硬化をひき起こします。
そのため、HDLコレステロールは善玉コレステロール、LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれます。LDLの数値はもちろん、LDLとHDLのバランスが重要です。また、HDLとLDLコレステロール、中性脂肪をまとめた総量が総コレステロールです。
コレステロールの数値が気になる場合には、同じ脂質代謝に関係する中性脂肪についても注意が必要です。中性脂肪が増えると、HDLコレステロールも減少することが多く、動脈硬化のリスクになるのに加え、膵炎(すい臓に起こる炎症)にもかかりやすくなります。
のどれかを満たした時に診断される病気です。
以前は高脂血症といわれていましたが、悪玉コレステロールや中性脂肪は高いことが問題ですが、善玉コレステロールは低いことが問題となります。そのため現在は、高脂血症から脂質異常症とよばれるようになりました。
日本動脈固化学会が定めている脂質異常症の診断基準を紹介します。
正常基準値は、40mg/dl以上。40mg/dl未満は低HDLコレステロール血症と診断されます。
正常基準値は、120mg/dl未満です。高LDLコレステロール血症と診断される基準は140mg/dl以上ですが、120~139mg/dlは境界域とされ、動脈硬化のリスク因子が高い場合には治療が検討されることもあります。
正常基準値は149mg/dl未満です。150 mg/dl以上の場合には、高トリグリセライド(中性脂肪のこと)血症と診断されます。
non-HDLコレステロールは、HDLにもLDLにも分類されないコレステロールのことです。HDLと同様に動脈硬化への影響があると考えられています。総コレステロールからHDLコレステロールの値を引いた値になり、150mg/dl未満が正常基準で、170mg/dl以上が異常、150~169mg/dlで境界域と診断されます。
表にまとめると以下のようになります。
どれくらいの数値であれば治療が必要なのか、気になる方も多いかと思います。脂質異常症のガイドライン(治療指針)では「動脈硬化による病気をどの程度起こしやすいか」という観点から管理目標値が異なっています。
一次予防というのはまだ動脈硬化による病気(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)を起こしていない方がこれらの病気を起こさないように予防すること、二次予防というのは動脈硬化性の病気になってしまった方が再発しないために予防することをいいます。
まずLDLコレステロールの管理目標値を達成し、その後non-HDLコレステロールの管理目標値の達成を目指すことが推奨されています。
また、二次予防では家族性高コレスレロール血症、急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞)、他の動脈硬化リスクを伴った糖尿病の方は()に示されるように、より厳しい目標が設定されています。
動物性の脂肪や魚卵、バターなど、コレステロールや飽和脂肪酸の多い食事はLDLコレステロールを増やしますので、摂りすぎないように注意します。また、コレステロールの排出を助ける食物繊維の多い食品や、青魚や大豆など不飽和脂肪酸を摂取するように心がけましょう。
適度な運動をすることによって、中性脂肪が下がり、HDLコレステロールが増加します。ウォーキングなど、無理のない運動を定期的に行いましょう。
喫煙はコレステロールを上げることがわかっていますので、コレステロールの異常がある場合はたばこを吸うのはやめましょう。
これらの治療を行っても脂質異常が十分に改善しなかった場合、薬物療法を考慮するようになっています。
しかし、
と、いろいろな事情で取り組めないことが現実です。
医療機関を受診して、「食事療法と運動療法をまずは頑張りましょう」といわれても、「言われなくてもわかっている」「それができたら苦労しない」という気持ちになってしまうかもしれません。
そのためこれらの生活習慣での治療を念頭に置きながら、必要な方にはお薬の力も使いながら、脂質異常症の改善を行っていきます。
繰り返しになりますがコレステロールの異常は、自覚症状があらわれることはほとんどありません。じわじわと動脈硬化がすすみ、ある日突然、脳血管障害や心疾患という形で症状を起こします。健康診断で異常を指摘されたら、「いいきっかけ」と少し立ち止まって現在の生活を見直し、少しでも健康な毎日を過ごしていただけたらと思います。
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乾小児科内科医院
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