本日発売になったApple Watch Series 4。残念ながら認可の問題から当面は米国のみでの機能で日本では使用可能にありませんが、シェアの高いスマートウォッチとしてはおそらく初めてオプション器具などを用いることなく心電図の計測が可能となりました。
クリニックが特定企業の製品に関してreviewをするのは賛否あるところかもしれませんが、あくまで循環器医として、心電図が計測可能なスマートウォッチが一般的に普及することによって起こりうるインパクトに関して考えてみたいと思います。
文字盤の裏にセンサーが付いておりここから心拍計測を行っています。従来、中央の光学式センサーのみであった(原理はこちら<注>英語ページ)のですが、今回から電気式センサーが追加されました。
この心電図計測機能はFDA(米国食品医療品局):日本でいうところの厚生労働省の認可を受けており、医療機器のレベルに近づきつつある、との見方もできるかもしれませんが、この承認は医療機器としてではなく、革新医療機器として新規分類を確立するためのDe Novo(デノボ)で受けているようです。
医療機器基準よりも厳密ではなく、後述しますがその精度には少々懸念が残る部分もあります。
この認証にあたっては2018年2月初旬から9月初旬にかけてスタンフォード大学と共同で行ったApple Heart Studyが寄与したといわれています。
2017年11月にAppleの「Heart Study」と名付けられた研究プロジェクトへの参加を表明した米国内のApple Watchユーザーに対して、Appleから実験の開始を知らせるプッシュ通知が届けられたようです。
対象は
で、心房細動、心房粗動と診断されたことがある方、抗凝固薬を内服している方は除外となっていました。
参加を希望した対象者はApple Heart Studyのアプリをダウンロードし、脈の不整をチェックされました。また希望者はePatch®という簡易型Holter心電図のような器具も無料で提供され検査を行っています。
結果は公開されてはいないのですが、海外での報道によれば、FDAは588人のデータをレビュー、半数近くが永続的または永続的なAFibを有しており、そのうち自動診断アプリは10リズムごとに約1つを分類できませんでした。
残りのうち、心房細動を持っていた人の98.3%は、心房細動を持っていると正しく認識されており、また、99.6%の時間で、心房細動を持っていない人たちも正しく識別していました。
また、心房細動を持っている可能性を示唆するアプリ通知を受け取った226人の参加者は、歩行型心臓モニター(おそらく前述のePatch®)を用いて平均6日間連続的に観察されています。
そして参加者の約41.6%が歩行型心臓モニターで心房細動を記録していました。観察期間中の不規則リズム通知アプリケーションで発生した心房細動通知については、実際に心房細動を心臓モニターで観察した患者の割合は78.9%でした。
この結果が事実であるとすれば、このデバイスはまだまだ医療機器として臨床で使用できるレベルではない、ということになります。
今後、実際市場に出たapple watch Series 4を用いて精度に関しての検討がなされると思いますのでその結果に注目したいと思います。
ここから先は計測制度が向上した前提での話になるので現状ではなく、近未来、ということになります(日本で使用できるようになる頃には状況が変わっている可能性もありますが)。
計測した心電図はPDF形式で医師にみせることができる、とされていますのでおそらくスマートフォンに記録されたデータをPCに送付し、事前に指定したパスワードを打ち込む、いった手順で上記のような記録が確認できるのだと思います。
アプリでの自動判定能力には疑念が残るものの、きちんと記録された心電図を医師が確認できるメリットは大きいと思います。
不整脈の中には発作の頻度が低く、受診された際に心電図を取っても不整脈かどうか判定が難しいことがしばしばあります。
しかし、この機能を用いて動悸や胸痛などの不整脈を感じる発作症状を認めた際に記録を行えば、医療機関でイベントレコーダーを用いて行っている精査を簡便に行えるようになるかもしれません。
こちらもまだまだ絵空事ですが、心房細動自動検出の精度が100%近くまで向上した場合、抗凝固薬治療も変わる可能性があると思います。
心房細動の初期では、心房細動は常に起きておらず、出たり引っ込んだりの状況にあります。心房細動が確実に同定できるようになれば、心房細動が出た日だけ抗凝固薬を内服し、出ていない日は内服しなくてもよい、といった治療法が確立されるかもしれません。
まだまだ発展途上ではありますが、今度のさらなる進化を大いに期待させてくれる機器であることは間違いありません。
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