「糖尿病はやせれば治る」は本当か?|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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「糖尿病はやせれば治る」は本当か?

2021.04.09

 
 

「糖尿病は治りますか?」
「薬を飲んだら糖尿病が治ったのでしばらく病院に行っていなかった」
こんな話を外来で耳にすることがあります。

「メタボがあると糖尿病になりやすい」
「甘いものを食べすぎると糖尿病になりやすい」
ことは、よく知られていますが、改善すれば糖尿病は完全に治るのでしょうか?

糖尿病になる原因と現在開発中の治療法なども交えてお話ししていきたいと思います。

 

糖尿病を完全に治すのは難しい

結論からいいますと、現状、糖尿病は完全に治るのは難しい病気です。

痩せていても糖尿病になる方がいることからもわかるように、そもそも糖尿病は「太ったらなる」という単純なものではありません。

糖尿病には大きくは2つの原因があり、

  • ① インスリンの分泌が弱い
  • ② インスリンの効きが悪い

の2つがあります。

② のインスリンの効きが悪くなる主な原因は、肥満です。
インスリンは、すい臓から分泌され、血液中の糖を細胞に栄養として取り込むのに働くホルモンです。

肥満があると、すい臓からインスリンが血液中に分泌されていてもインスリンに対する反応が鈍くなるために、インスリンの血糖を下げる働きが十分に発揮されなくなってしまう(インスリン抵抗性)のです。

こちらが主な原因の場合には、食生活や運動習慣などを見直すことで糖尿病が大きく改善することが期待できます。

一方、①のインスリンの分泌自体が不足している場合には、いくらインスリンに対する反応がよくても、十分に血糖を細胞に取り込むことができません。

実際には、①と②のどちらか一方だけではなく、両者が混在していることもしばしばです。

 

根治ではなく寛解を目指す

残念ながら現在の医学では、「弱まったインスリン分泌機能を完全に回復され、糖尿病を完全に治してしまう」=「根治」する治療はありません。

しかし、状態と努力によっては、「糖尿病による症状や検査異常が消失した状態にする」=「寛解」させることは可能です。

中でも糖尿病になってからあまり時間が経っていない早期の方は、生活習慣の改善によって「治る」可能性が十分にあります。

 

5年間で体重の10%を減らせば、2型糖尿病が寛解し得る

では、どの程度の減量が必要なのでしょうか。

英国で新たに糖尿病と診断された867人(40~69歳)を対象とした研究(Dambha-Miller H Et al. Diabet Med. 2020 Apr;37(4):681-688)をみてみましょう。

この研究では、追跡期間5年で257人(30%)に糖尿病の寛解がみられました。

糖尿病の診断から1年後に体重が変化していなかった人の糖尿病寛解率を基準として、ベースラインの体重、年齢、性別、経済状態などで調整し、減量達成レベル別に寛解率を比較すると、10%以上の減量を達成していた人は寛解に至る頻度が77%高いことがわかりました(リスク比1.77、P<0.01)。

また、診断から1~5年かけて10%以上減量した人(同2.43、P<0.01)や、5~10%減量した人(同1.43、P=0.02)の寛解率も有意に高かったのです。

つまり、「極端なダイエットをしなくても5%以上体重を減らすことができれば、糖尿病が寛解する可能性が高まる」ということになります。  

ちなみに目標とする体重の設定の仕方ですが、「身長(m)×身長(m)×22」を計算すると標準体重が求められます。標準体重より10kg以上重い方はまずは減量が必要です。

例えば、身長が170cmの方の場合、1.7×1.7×22から標準体重が63.58kgと求められます。現在の体重が75kgの場合には、およそ4kg以上の減量によって糖尿病が治る可能性がある、ということになります。

ただし、極端な食事制限などではなく、適度なカロリー制限と運動などでゆっくりと減量していく必要はあります。

食事療法に関しては、

運動療法に関しては、

などで紹介していますので、ご参照ください。

 

大切なのは何kg体重を減らすかではなく、よい生活習慣を身につけること

肥満がある場合には5-10%の減量で糖尿病が寛解する可能性をご紹介しました。実際、熱心に食生活を見直し、規則正しい運動も取り入れたことで寛解になる方はいるものの、なかなか難しいのも事実です。

また急激な減量は、リバウンドを来しやすいことからお勧めしていないので、5年間で10%を目標に焦らずゆっくりと。正しい食生活と運動習慣を続けていくことで徐々に減量していくことが望ましいです。

糖尿病の治療においては、減量もさることながら、体重を増加させないこと、さらには体重変動を少なくすることも重要と考えられています。

世界では7秒に1人が糖尿病関連で死亡しており、日本でも年間40万人、おおよそ1分に1人が糖尿病と新たに診断されています。

糖尿病にならないことも重要ですが、なってからでも早期であれば、治せる可能性もあります。

健診で糖尿病を指摘されたら放置せず、できるだけ早めに食生活の見直しや運動習慣づくりなど、生活習慣の改善に取り組んでいただければと思います。

 

© Inui pediatrics and internal medicine clinic

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