30歳以上の男性ではおよそ3人に1人は尿酸値が高く、食生活の欧米化に伴い増加傾向です。
ユリスは、2020年5月25日に登場した痛風治療の新薬です。今回は、ユリスの特徴についてまとめていきたいと思います。
高尿酸血症と痛風
高尿酸血症とは、身体に尿酸が蓄積した状態のことで、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態と定義されています。
尿酸値が高い状態が数年続くと、関節や腎臓・尿管などに尿酸の結晶ができ、関節炎や結石をきたします。これが痛風です。
関節炎は強い痛みを伴うことが多く「風が吹いても痛い」ことから痛風と名づけられています。
高尿酸血症は、原因によって大きく3つのタイプ(尿酸排泄低下型、尿酸産生過剰型※、混合型)に分けられます。
日本では、尿酸排泄低下型が約60%、尿酸産生過剰型が12%、混合型が25%と報告されています。
尿酸の体内動態
プリン体の肝臓での生合成と食事からの摂取によって産生された尿酸は、いったん尿酸プールとして体内に蓄えられ、過剰分は腎臓から尿中、腸管から糞中へ排泄されます。
腎臓と腸管は尿酸排泄の主要な役割を担っており、腸管から1/3、腎臓から2/3が排泄されます。
また、一度尿中に排泄された尿酸の一部は、近位尿細管に存在する「尿酸トランスポーター1(URAT1)」を介して再吸収することで再び体内へ戻り、尿酸値が下がりすぎてしまわないようにコントロールされてす。
正常な状態では産生と排泄のバランスが保たれ、一定量が貯蔵されるようになっています。
腎臓での尿酸排泄
尿酸排泄の2/3を占める腎臓での流れについてもう少し詳しくみていきましょう。
正常な尿酸排泄
正常な尿酸排泄においては、尿酸は糸球体で100%濾過された後、近位尿細管に運ばれます。近位尿細管では尿酸トランスポーター(URAT1)を介して再吸収と分泌が行われています。そして最終的に尿中に排泄さ尿酸は糸球体でろ過された尿酸の10%程度です。
尿酸再吸収亢進状態
一方、何らかの原因でURAT1を介した近位尿細管での再吸収が亢進し、尿酸の排泄が低下すると、血中での尿酸が上昇し、高尿酸血症をきたします。
つまり、高尿酸血症をきたす要因のひとつとしてURAT1を介した尿酸再吸収の亢進があるのです。
尿酸治療薬の種類
尿酸の治療薬では通常、
病型に応じた薬物治療が推奨されていましたが、排泄低下型に尿酸生成抑制薬を使っても効くので、現在、病型分類に応じて治療薬を選択する意義の議論中です。
実際、副作用が少なく使いやすいことから全体の処方のうち、フェブキソスタット51.5%、アロプリノール39.0%と、尿酸生成抑制薬が多く処方されています。
痛風発作については、前兆期にコルヒチンを投与します。もし前兆症状が現れた段階で治療ができなかった場合には痛みが生じ、通常24時間以内に痛みのピークを迎えると言われています。
また痛風発作の症状がはっきりと現れている状態にはNSAIDsの投与を行います。
痛風発作を起こしている時に尿酸治療薬を使うと炎症が悪化するため、まず炎症を改善させ、炎症が落ち着いてから尿酸を下げる治療を行います。
ユリスの特徴
ユリスは、ユリノームやベネシッドと同じ、尿酸排泄促進薬のひとつです。
従来の尿酸排泄阻害薬ではごく低い頻度ながらみられた重篤な肝障害や薬の代謝で重要な働きをしているCYP2C9を阻害する作用が問題となっていました。
ユリスは、これらの副作用を克服すべく開発された薬になります。
ユリスの作用機序
ユリスは、尿酸再吸収を阻害することで、尿酸排泄を促し、血中の尿酸値を低下させます。
主に近位尿細管での尿酸再吸収に関与している尿酸トランスポーター(URAT1)の選択性が高いため、他の尿酸分泌経路は阻害せず、URAT1を介した再吸収経路を阻害します。
そのため、腎機能が軽度〜中等度低下した場合にも使用できます。選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI: Selective Urate Reabsorption Inhibitor)と名づけられています。
ユリスの用法・用量
通常、成人にはドチヌラドとして1日0.5mgより開始し、1日1回経口投与します。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量します。
維持量は通常1日1回2mgで、患者の状態に応じて適宜増減しますが、最大投与量は1日1回4mgとします。
尿酸値を急激に下げると、痛風発作を誘発することがあるため、徐々に増量していくのは、フェブリクやトピロリックなどと同じです。
ユリスの剤形・薬価
ユリスの剤形は、
の3剤形になります。
2020年10月3日時点での薬価は、
になります。
副作用
添付文書の情報によれば、主な副作用として頻度の高い順に、
が報告されています。
効果について①:ユリノームとの比較
同じ尿酸排泄促進薬のユリノームと効果を比較した検討が国内第Ⅲ相臨床試験として行われています。
主要評価項目は「投与終了時における投与前値からの血清尿酸値低下率」とされ、ユリノームに対するユリスの非劣性が検証されています。
ユリノームに対するユリスの非劣性=尿酸値を下げる効果は劣らない、という結果でした。
ユリスは、ユリノームと同程度の効果が期待できる、と考えてよいでしょう。
ユリノームは、肝障害、腎結石、妊婦・妊娠している可能性のある患者さんでの使用が禁忌であったのに対し、ユリスでは問題なく使用できる点が異なります。
効果について②:フェブリクとの比較
ユリスとは作用機序が違うものの、尿酸治療薬として最も使用率の高いフェブリクとも効果の比較が国内第Ⅲ相試験として行われています。
図にあるようにユリスは、フェブリクに対しても非劣性の結果が得られました。
ユリスは、フェブリクと同程度の効果が期待できる、と考えてよいでしょう。
つまり、ユリスは、現行の尿酸治療薬と同程度の効果を持ち、副作用が少ない薬剤、といえるでしょう。
まとめ
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