朝食抜きは体に悪いは本当か?|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

乾小児科内科

WEB初診予約

JR高崎駅 西口 徒歩9分
スズラン高崎店の4軒となり

027-322-3252

ブログ
doctor's blog

アーカイブス

  • お問い合わせ
  • 診療カレンダー

朝食抜きは体に悪いは本当か?

2023.06.16

忙しくてなかなか時間が取れない、前日飲みすぎて胃がもたれている、朝は食欲があまりわかない…。

色々な理由で朝食を摂らない方は少なくありません。1日3食という言葉がありますが、逆に食事回数を減らす減量法を提唱する人もいます。
朝食を摂らないことは体にどんな影響があるのでしょうか。ちょっと考えていきたいと思います。

社会人現役世代の4~5人に1人は朝食を抜いている

上の図は、厚生労働省が公開している国民健康・栄養調査報告書をもとに年代別の朝食欠食率をまとめたものです(欠食:菓子・果物などのみ、錠剤などのみ、何も食べない)。

小中学生までは5%程度であった朝食欠食率は、高校生世代から上昇し、20歳を超えると20%以上となってきます。特に男性で高い傾向にあり、最も高い40代男性では28.5%となっています。

60代以上では大きく低下してくることから考えると20−50代のいわゆる社会人現役世代は多忙なこともあってか4〜5人に1人はきちんとした朝食を取っていないことがわかります。

社会人現役世代の4~昔は1日2食が主流だった

古来、日本では夜明け前に起きて仕事をし、気温が上がる10時くらいに家に戻って、そこで朝と昼をかねた食事をするのが一般的でした。奈良時代の役人の勤務時間は早朝から昼ごろまでだったそうです。

宴会は午後2時に始まって日没まで。上流階級も同様で、鎌倉時代後期の後醍醐天皇は朝食を正午頃、夕食を夕方4時頃召し上がっていたそうです。そして暗くなると誰もが床についていたのです。

就寝が遅くなりがちな現代よりも、日の出、日没を生活の目安とした古代から中世の暮らしのほうが、からだ本来のリズムには合っていたでしょう。

1日3食が主流となったのは江戸時代から~昔は1日2食が主流だった

1日3食は、戦国時代にエネルギー不足を補うためにおにぎりを携帯したり、1日3食の習慣がある中国からの留学帰りの僧などから少しずつ広まったりしていたようですが、本格的に広まったのは江戸時代の中期頃といわれています。

当時は電気がなく、人々は日没とともに寝ていました。夜の灯りは菜種油が使われていましたが、高級品で気軽に使えるものではありませんでした。それが江戸時代中期になり菜種油の供給量が増え、価格が下がっていったことで人々の夜時間はどんどん長くなっていきました。すると、1日2食ではお腹が空いてしまうので、だんだんと1日3食になっていったのです。

1日2食はダメ?

朝食を抜くことで1日の総摂取カロリーが減らせダイエットになるのではないか、という考え方は存在します。

昔と比べ、交通手段が発達しており、デスクワークが主体の仕事であったりすると生活するために必要なエネルギーはそこまで多くないため、3食だと食べすぎてしまいエネルギー過多になってしまう、という論調です。

中にはライフスタイルにうまく合う人もいるかもしれませんので必ずしも間違いとはいえませんが、バランスのよい食事はなかなか2食だと難しく、それからセカンドミール効果の問題があります。

セカンドミール効果

セカンドミール効果とは、「最初にとる食事(ファーストミール)が、次にとった食事(セカンドミール)の後の血糖値にも影響をおよぼす」という概念です。

セカンドミール効果を検討した研究には、例えば以下のようなものがあります。

朝9時に下記の第1食を下記3グループにそれぞれ食べてもらいました。

① 大豆焼菓子
② 米菓子「せんべい」
③ 何も食べない(水のみ)

続けて第2食は、3時間後の昼12時に、3グループ共通で市販栄養食品を食べてもらいました。その後、食後血糖を測定したところ、図のような結果が得られました。

薬理と治療36(5):417-27(2008)をもとに作成

大豆菓子を食べたグループは、米菓(おせんべい)を食べたグループに比べ、食後240分~300分の血糖値がはるかに低いという結果になりました。また何も食べなかったグループと比べても、大豆菓子グループのほうが低い結果でした。これは、大豆焼菓子を第1食目に食べたことで糖の吸収が抑制された、もしくは血中からの糖の代謝を促進するホルモンが多く分泌されたためと考えられます。

朝食をとることで昼食をとった際の消化・吸収もゆるやかになる上に、小腸に達した糖分と食物繊維により血糖値の低下や食欲を調節するホルモンが分泌され、満腹感の持続にも大きな役割を果たしているのです。

1日3食で均等量がベスト

1日3食で各食事のカロリー量は均等、と言うのが理想的ではありますが、あわただしい朝はどうしても軽めの食事ですませ、比較的ゆっくりと時間がとれる夜に、たくさん食べてしまうという人は多いでしょう。

厚生労働省による調査では、各食のエネルギー比率は朝食24%、昼食32%、夕食44%の割合となり、朝食は夕食の6割程度となっています(令和元年 国民健康・栄養調査)。

特に、高度肥満者や肥満者は朝食の割合が低く、夕食の割合が高いという結果も出ています。統計的にも朝食をしっかり食べていない人には肥満者が多いことが裏づけられているのです。

朝食を抜くと昼食・夕食後の血糖値が上昇しやすくなる

糖尿病患者さんではさらに朝食の重要性が高まります。

この研究では過体重の2型糖尿病患者22人(平均年齢57歳、罹病期間8.4年、BMI28.2、HbA1c7.7%)を無作為に割り付けるクロスオーバー試験として行われています。

参加者に1日目は3食を摂取してもらい、2日目は朝食を抜き昼食と夕食だけをとってもらいました。それぞれ食事の内容は、ミルク、ツナ、パン、チョコレートバーで、正確にカロリーを等分してありました。

その結果、朝食を抜いた日の血糖値のピークは、昼食後268mg/dLで、夕食後は298mg/dLでした。これに対して、朝食を食べたときの昼食および夕食後の血糖値のピークは、それぞれ192mg/dL、215mg/dLで、食後血糖値の急激な上昇が抑えられていました。さらに、インスリン分泌のピークは、朝食を抜くと30分遅れることが判明しました。

朝食を抜いただけで、グルコース代謝の低下が引き起こされます。糖尿病患者さんが朝食を抜くと、たとえ昼食と夕食の炭水化物の量を減らしたとしても、血糖値の上昇を十分に抑えることは難しいのです。

たかが朝食、されど朝食

「言うは易く行うは難し」とはいいますが、習慣を変えるというのはなかなか難しいことです。できる範囲でいいのでまずは自分で可能な範囲から始め、徐々に生活習慣の「当たり前」を見直してしていけるといいですね。

楽しく食べて健康が保たれれば、素敵だと思いませんか。

アーカイブス

pagetop

pagetop