目次
アムロジン/ノルバスク(一般名:アムロジピン)は、Ca拮抗薬(カルシウム拮抗薬)に分類される降圧薬になります。アムロジンとノルバスクは同一成分の薬ですが、販売元の会社によって商品名が違っています。
現在の日本では数多くのCa拮抗薬が発売されていますが、その中で最も多く使われているのがアムロジン/ノルバスクになります。
ジェネリック医薬品としては、一般名(成分名)のアムロジピン錠として発売されています。薬価がリーズナブルになっているので、ますます使いやすくなっています。
カルシウムは主に骨や歯に分布して体を支えていますが、それ以外の組織にも微量に存在し筋肉を縮める働きがあります。 カルシウム拮抗薬は血管の筋肉に対するカルシウムの働きを抑えることで血管を広げ、血圧を下げる効果があります。
特に心臓の血管(冠動脈)に作用すると、心臓への血液の量が増えるため、狭心症の発作を予防する効果があります。また、血管がけいれんするタイプの狭心症(冠攣縮性狭心症)にも用いられます。
アムロジン/ノルバスクの適応が正式に認められている病気は、以下のようになります。
実際にはアムロジン/ノルバスクは、高血圧に対して使うことがほとんどで狭心症に使う場合は、さきほどもお話しした血管がけいれんするタイプの狭心症にも使いますがその場合は、別の種類のCa拮抗薬を使うことが多いです。
<メリット>
<デメリット>
それではアムロジン/ノルバスクの特徴を、
に分けてみていきましょう。
アムロジン/ノルバスクは、1990年代に登場して以来、世界中で最も多く処方されている薬剤の一つです。最大の特徴はその確実な効果に加えて、半減期(薬の濃度が半分になるのにかかる時間)が36時間と他の降圧剤よりも圧倒的に長いことにあります。
そのため、1日1回服用で夜間から早朝においても降圧効果を発揮しやすい特徴があります。数多くの研究で優れた降圧効果を発揮し、内服開始前の血圧が高い方ほど大きいことが報告されています。また、心臓病や脳卒中の予防にも有効であることが報告されています。
現在アムロジン/ノルバスクで発売されているのは
の6剤型になります。
OD錠とは口腔内崩壊錠(Oral Dispersing tablet)の略で、口の中にいれたらしばらくして自然に溶けていくお薬です。
薬価はジェネリック医薬品のアムロジピン錠が発売されているため、比較的リーズナブルになります。
*2019年11月現在
これに自己負担割合(1-3割)をかけた金額が患者さんの自己負担額になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。
配合剤は、何種類かのお薬の成分を一つの薬の中に含ませたお薬です。お薬の錠数をへらすことができ、薬価も2剤を足した金額よりも低くなっている(中には1錠分の価格のお薬もあります)ため、お得です。
アムロジン/ノルバスクは、もともと広く使われているお薬のため、配合剤の種類も多くあります。現時点で販売されているものとしては
があります。
アムロジン /ノルバスクの副作用は、ある程度しっかりした効果が得られ、副作用の非常に少ない薬です。だからこそ、大きな支持を得たともいえます。
とはいえ副作用が全くないわけではありません。
お薬承認時とその後の市販後調査におけるアムロジン/ノルバスクの副作用頻度は、主なもので
このようになっています。
市販後調査では0.1%以下と報告頻度は低いものの、注意が必要な副作用としては歯肉肥厚(歯ぐきがはれる)があります。歯肉肥厚は、長期服用後に起こるため、患者さんや担当の医師も副作用と気づきにくく、回復までに時間がかかるため、報告されにくいことが考えられます。
アムロジン/ノルバスクは、以下のようなお薬になります。
アムロジン/ノルバスクは1日1回服用することで、他の種類の降圧剤に比べて比較的速やかに効果が得られ、お薬を始める前の血圧が高い方ほど、大きな効果が得られます。
また、飲む量(mgの数字)が多いほど、強い効果が得られます。緊急時を除いて降圧剤は、始めから多めの量を出して血圧が下がりすぎてしまうことの方が、少なめの量で十分な効果が得られないことよりも危険なため、通常やや少なめの量から始め、1ヶ月後程度に家庭血圧を参考に量の調節を行います。最高用量の10mgまで使っても効果が不十分な場合は、
を検討していきます。
1993年の発売開始当初は、1日5mgまでしか承認されていませんでしたが、欧米など海外で10mgが承認され、増量することによりさらに優れた降圧効果を発揮し、その有効性、安全性は、多くの大規模臨床試験で確認されたこともあり、2009年より日本でも10mgまで増量可能となっています。
【参考】アムロジン/ノルバスクの半減期
お薬の効き方をみていくにあたっては、
が重要になってきます。
アムロジン/ノルバスクは、
となっています。
アムロジン/ノルバスクは、5.5-6時間ほどでピークとなり、そこから35-38時間で半分の量になるということになります。ですから1日1回の服用でしっかりとした効果が得られるのです。
そしてお薬の血中濃度は、飲み続けていくことで安定していきます。およそ半減期の4~5倍の時間で安定するといわれていて、これを定常状態とよびます。
添付文書の記載ではアムロジン/ノルバスクの血中濃度は、健常成人に2.5mgを反復経口投与(1日1回14日間)した場合、投与6〜8日後に定常状態(初回投与時の約3倍)に達し、以後の蓄積は認められなかった、とされています。
アムロジン/ノルバスクに限らず、Ca拮抗薬は、グレープフルーツを食べたり、ジュースを飲んだりすると血圧が下がりすぎる(薬の効果が強くなってしまう)ことが知られています。
グレープフルーツに含まれているフラノクマリン類という成分との相互作用とされていますが、他の柑橘類ではみられません。血圧が下がりすぎるとふらつきなどが出る場合があることから、アムロジン/ノルバスクを内服している方は、できるだけグレープフルーツを摂らないようにしていただく必要があります。
アムロジン/ノルバスクの妊娠への影響からみていきましょう。アムロジン/ノルバスクのお薬の添付文書には、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
このように記載されています。
高血圧治療ガイドライン2019では同系統のCa拮抗薬であるニフェジピンは妊娠20週以降であれば使用可能、それ以外のCa拮抗薬を用いる場合は、十分に説明し、インフォームドコンセントをとったうえで医師の判断と責任の下で用いることを検討してもよい、と記載されています。
アムロジン/ノルバスクを続けることはできないわけではありませんが、コントロールがつくのであればニフェジピンに切り替えるのが一般的です。
日本でCa拮抗薬が使用制限になっている背景として、動物実験で胎児アシドーシスや催奇形性が指摘されている、という経緯があります。しかし、投与量の少ないヒトの臨床成績では安全とする報告が多く、諸外国ではむしろ第一選択薬として使われています。
次に、アムロジン/ノルバスクの授乳への影響をみていきましょう。アムロジン/ノルバスクのお薬の添付文書には、
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること。
このように記載されています。
しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。
国立成育医療研究センターが公開している「授乳中に安全使用できると考えられるお薬」には、アムロジン /ノルバスクが明記されており、授乳中に中止する必要はありません。
アムロジン/ノルバスク錠は、1993年に発売されたお薬になります。お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)
アムロジン/ノルバスク錠のジェネリックは、この特許が切れた2008年に発売となりました。薬価も多くが先発品の半分以下となっているので、リーズナブルになっています。
先発品はお薬を開発した会社から発売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から発売されます。アムロジン/ノルバスク錠も、様々な製薬会社から発売されています。
これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。
ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。
そのため、変更しても効果に大きな差はないと推定されます。理屈ではそうですが、心配になってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。
© 2019 Inui pediatrics and internal medicine clinic