大雪が降る地域も出るなど、寒い日が続いています。寒い時期はいろいろな病気にかかりやすくなったりしますが、運動したときに喘息が悪化する方が増える時期でもあります。
もちろん冬場に限らず、運動によって喘息が悪化する現象は知られており、これを運動誘発喘息といいます。
今回は、運動誘発喘息の特徴・対処法についてまとめていきたいと思います。
運動誘発喘息とは
運動により一時的に喘鳴(ゼーゼー)や呼吸困難が起きる現象を運動誘発喘息(EIA: exercise-inducedasthma)といいます。喘息でない方にも起こることがあるため、運動後に気管支が収縮する現象として運動誘発気管支攣縮と呼ぶこともあります。
報告により頻度は異なりますが、喘息児の40-80%程度に認めます。重症例ほど、また学年が上になるほど頻度が高くなります。
そのため、幼稚園から小学校低学年ではあまり多くないものの、小学校高学年生や中高生では頻度が上がります。
運動誘発喘息の発症機序
運動時にはたくさんの酸素を必要とするため、通常時よりも多く息を吸い込みます。冷たい空気をたくさん吸い込むと、気道が冷え込みます。また、運動によって水分が失われ、気道粘膜は脱水になります。
すると気管が収縮してしまい、運動誘発喘息が起きると考えられていますが、機序に関しては、はっきりしていない部分も多いようです。
EIAはどんな状況で起こりやすいか
小学生を対象に行った調査では、運動誘発喘息は、体育の授業や体育的行事、昼休みなど、運動を行う場面で多く起きていました。
また、EIAの起こりやすさや程度は運動の種類によって異なります。
運動の起こりやすさ順では、ランニング>サイクリング>水泳・歩行となっています。
ランニング、特に冷たく乾燥した冬に行うマラソンは、運動中に強く冷気を吸い込むため、最もEIAを起こしやすい運動と考えられています。
EIAの自覚がなくても「空気が冷たい時期などで走り終わったときに、せき込みや息切れが長く続く」場合には、EIAの可能性があります。
また、鼻炎のある方は、ない方に比べてEIAが起こりやすいことも知られています。
EIAを予防するには
運動誘発喘息は予防が重要です。しっかりとしたウォーミングアップを行うことと、必要に応じて運動前に薬を吸入したり、内服したりします。
気道に冷たく乾燥した空気が流入することで発作が起きやすくなりますので、気温や湿度が極端に低いところでのトレーニングを避ける、マスクをすることも予防に有用です。
ウオーミングアップ
10~20分のしっかりとしたウォーミングアップを行うことである程度の発作を予防できます。逆に、準備体操をしないで急に激しい運動をすると、発作が出やすくなります。
マスク
マスクをつけることで湿度と温度の保持および水分喪失の防止につながり、EIAの予防効果があります。
薬剤による予防
●通常時
普段から自宅で、ロイコトリエン受容体拮抗薬(プランルカスト、モンテルカストなど)を内服し、必要に応じて定期的に吸入ステロイドを使用し、喘息の状態をコントロールしておくことでEIAが起こりくなります。
●運動時
運動15-30分前に短期作用型吸入β2刺激薬(メプチン、サルタノールなど)の吸入を行います。β2刺激薬は気管支を広げる薬で、運動前に吸入することで、運動負荷により気道が狭くなってしまうのを予防ます。
ただし、連用していると徐々に薬が効きにくくなってしまうため、使用方法には注意が必要です。
最後に
運動誘発喘息は、子供だけでなく、大人でもなることがあり、トップアスリートでも悩まされている方は少なくありません。
運動したら息がしんどくなる、咳き込む、という方は、我慢したり運動をあきらめたりしてしまう前に、どうぞ外来でご相談下さい。
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