身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる帯状疱疹(たいじょうほうしん)。
帯状疱疹は、80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。
この帯状疱疹を予防するためのワクチンとして、従来のワクチンよりも高い効果が期待できる新しいワクチン:シングリックスが登場しました。
新しいワクチンだから「新(シン)グリックス」という名前なのですね!
関係ないと思うよ…
今回はシングリックスの特徴についてみていきたいと思います。
帯状疱疹とは
帯状疱疹は神経に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで発症する病気です。
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染したときは、水痘(水ぼうそう)として発症します。
多くの場合、水痘は子どもの頃に発症し1週間程度で治りますが、治癒後もウイルスは体内の神経節に潜伏しています。
その後、加齢やストレス、過労などが原因となってウイルスに対する免疫力が低下すると、神経節に潜伏していたウイルスが再活性化し、神経を伝わり皮膚に到達して、痛みを伴う赤い発疹を生じます。
これが帯状疱疹です。
通常は生涯に一度しか発症しませんが、免疫が低下している場合などでは再発することもあります。2回以上帯状疱疹にかかる方は、全体の4〜6%程度といわれています。
通常右側、または左側どちらか一方に出るのが特徴で、痛みを伴う皮膚症状が3週間ほど続きます。
帯状疱疹の発症年齢
帯状疱疹は、60歳代を中心に50歳代〜70歳代に多くみられる病気ですが、過労やストレスが引き金となり若い人に発症することも珍しくありません。80歳までにおよそ3人に1人の割合でかかるといわれています。
主な発症部位
帯状疱疹は、一般に、身体の左右どちらか一方の神経にそって帯状にあらわれます。
胸から背中にかけて最も多くみられ、全体の半数以上が上半身に発症します。また、顔面、特に眼の周囲も発症しやすい部位です。
帯状疱疹の症状
帯状疱疹の皮膚の症状は、通常2〜3週間で治ります。
症状としてはまずピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が出て、1週間程度で痛みがある部分に赤い斑点が見られるようになります。
その後、赤い斑点内に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてびらん(ただれた状態)になり、約2週間でかさぶたになって症状がおさまる、という経過をたどります。
帯状疱疹はひとにうつる?
帯状疱疹としてうつることはありませんが、水ぼうそうに一度もかかったことのない人には、水ぼうそうとしてうつる可能性があります。皮膚の症状が治るまでは、水ぼうそうにかかっていない赤ちゃんや子供、妊婦さんと接触しないようにしましょう。
水ぼうそうのとき、ウイルスはから空気中に広がり、他の人に感染します。 帯状疱疹は、口からウイルスが広がることはまれですが、水ぶくれからウイルスが出て感染することがあります
帯状疱疹の治療
治療の基本は抗ウイルス薬です。抗ウイルス薬により、ウイルスの増殖を抑制することで、病気の期間が短縮され、痛みの緩和も期待できます。また、病気がひどくなると、あとや痛みが残ってしまうことが多いため、できるだけ早い時期にしっかり治療を行うことが肝心です。
帯状疱疹の予防
日ごろからストレスや疲れを溜め込まないようにして、免疫力が低下しないようにすることが大切です。
そのためには、バランスの良い食事、適度な運動、趣味や楽しむメリハリのある生活が大切だと考えます。
また、帯状疱疹を予防するために使用できる予防ワクチンがあります。
帯状疱疹の予防ワクチン
現在、帯状疱疹ワクチンとしては、
の2種類のワクチンが使用可能です。
どちらのワクチンも接種することで、帯状疱疹の発症率を下げ、重症化を防ぎ、帯状疱疹後神経痛を予防する効果が期待できます。
予防効果に関しては、ビケンの50%に対して、シングリックスが90-97%と、ビケンを上回りますが、費用は4倍以上と高額です。
また予防効果はビケンは5年程度、シングリックスは9年以上持続すると報告されており、免疫持続の面でもシングリックスが優れています。
薬剤名 | 水痘ワクチン(ビケン)(1) | シングリックス(2),(3) |
---|---|---|
種類 | 弱毒化生ワクチン | 不活化ワクチン |
効果 |
帯状疱疹の発症 51.3%減少 帯状疱疹後神経痛 66.5%減少 |
帯状疱疹の発症 90-97%減少 帯状疱疹後神経痛 88.8%減少 |
接種回数 | 1回 | 2回 |
価格 | 8,800円(税込) |
20,000円(税込)/回 計2回で40,000円 |
副反応 |
注射部分の痛み、腫れ 倦怠感など 症状は3回〜1週間以内 |
注射部分の痛み、腫れ 倦怠感、頭痛など 症状は3回〜1週間以内 |
持続期間 | 5年程度 | 9年以上 |
利点 |
価格が安い 副反応が少ない |
高い効果 |
欠点 | 予防効果はシングリックスに比べると劣る |
2回接種する必要がある 費用が高い 注射部分の腫れが強い |
(1) Oxman MN, et al. N Engl J Med. 2005; 352(22): 2271–2284.
(2) Lal H, et al. N Engl J Med. 2015; 372(22): 2087-2096.
(3) Cunningham AL, et al. N Engl J Med. 2016; 375(11): 1019-1032
より効果の高い発症および重症化予防、帯状疱疹後神経痛の症状軽減を考慮する場合には、シングリックスをお勧めします。
ただし、接種を2回受ける必要があり、費用も高いためライフスタイルに合わせた選択がよいでしょう。どちらにしようか判断に迷う場合は、一度外来にてご相談いただけると幸いです。
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