足の狭心症「閉塞性動脈硬化症」の症状・検査・治療について|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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足の狭心症「閉塞性動脈硬化症」の症状・検査・治療について

2020.06.05

足の狭心症「閉塞性動脈硬化症」の症状・検査・治療について

 
 

動脈の壁にコレステロールを中心とした脂肪分がたまり、血管の内側を狭くしたり、もろくしてしまう動脈硬化。

動脈硬化によって狭心症や心筋梗塞といった心臓病が起きることは有名ですが、足の血管にも狭心症が起きることは意外と知られていません。

今回は足の狭心症「閉塞性動脈硬化症」のお話です。

 

閉塞性動脈硬化症とはどんな病気か

主に足の動脈に動脈硬化が起こり、血管の内側が狭くなったり、つまったりすることで、血流が悪くなる病気です。
病名の英語名からASO(エースオー)と呼ばれ、国際的には末梢動脈疾患(PAD)と呼ばれています。

 

成人全体で1-3%、65歳以上では3-6%

閉塞性動脈硬化症は年齢を重ねるにつれて発症頻度が高くなります。
過去に行われた研究によれば、成人全体で1-3%,65 歳以上では3-6%,糖尿病患者さんでは5-10%の方が閉塞性動脈硬化症であることが報告されています。

また、男性の方が女性よりも倍近くかかりやすいともいわれています。

 

どんな症状が出る?

「一定の距離を歩いていると太ももやふくらはぎが重くなったり、痛くなったりしてきてしまい、だんだん歩くのが辛くなってくるが、少し休むと軽くなる」というのが最も典型的な症状です。

この症状は専門的には間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれています。

「間欠性」とは、間隔をおいて、起きたり、起きなかったりすること。「跛行」とは、びっこを引くという意味で、「間欠性跛行」は、歩くことで起きたりする歩行障害のことです。

歩行障害なので整形外科的な病気や年齢的な変化からきているものと考える方も少なくないのですが、細くなっている血管から十分な血液を送れないために歩くと足が痛くなる「足の狭心症」ともいうべき状態になっている可能性もあるのです。

間欠性跛行を起こす足の血管病は他にもあるため、この症状だけで確実に診断することはできませんが、閉塞性動脈硬化症の場合は

  • ・一定の距離以上歩いたときに歩行障害が起こりやすい(例:200mぐらい歩くと足が重くなって歩けなくなる)
  • ・症状が毎回同じように出てきやすい(例:あの坂を登っているといつも足が痛くなってくる)

といったことが特徴といえます。

足に冷たい感じやしびれを伴うこともありますが、これらは背骨の異常などによる神経障害が原因のこともあり、整形外科や神経内科での精密検査が必要な場合もあります。

 

さらに進行すると…

手足の感覚が鈍くなってしまい、ケガをしても気づかないこともあります。 もともと血行が悪くなっているところに細菌が入って感染症を起こすと治りが悪く、最悪の場合は病変部が腐ってしまい、切断しなければならないこともあります。

そのため、早期の段階で発見し、治療を開始することはとても重要です。

 

どんな人がなりやすいか

閉塞性動脈硬化症になりやすい要因には以下のものが知られています。

  • ・喫煙
  • ・糖尿病高血圧症
  • ・脂質異常症(高脂血症)
  • ・慢性腎不全

喫煙者が閉塞性動脈硬化症になると、非喫煙者に比べ、間欠性跛行が生じる割合が約3倍も高まるといわれています。

糖尿病の患者さんは、そうでない患者さんに比べ、閉塞性動脈硬化症が重症化しやすく、治療のため足を切断する下肢切断率は数倍もあがると報告されています。

 

足だけの問題でない可能性も

閉塞性動脈硬化症は主に足の血管に動脈硬化をきたす病気ですが、全身の動脈硬化が進行した結果、足の血管にも病状を起こしていることも多く、動脈硬化による他の病気も合併している可能性があります。

冠動脈疾患(心臓を栄養する血管の病気:狭心症や心筋梗塞など)は約50%、脳血管疾患は約20%の方に合併するといわれています。

脳卒中、狭心症、心筋梗塞などの異常を気付かない間に起こしている恐れもあり、これらの病気の合併にも注意が必要です。

実際、歩くと足が重くなることがきっかけで受診し、閉塞性動脈硬化症だけでなく、心臓病も見つかり治療に至る、といったケースは少なくありません。

閉塞性動脈硬化症の患者さんは、5年後には約20%が心臓や脳の血管疾患を発症し、このことが原因で約15%が死に至るといわれていますから、軽くみるのは禁物です。

 

どんな検査がある?

閉塞性動脈硬化症を疑った場合、まず問診と触診が行います。 触診では足のつけ根、膝の後ろ、くるぶしの内側、足の甲にある動脈を触って、脈が触れるかどうか、冷たくないかどうか、皮膚のトラブルがないか、などを調べます。

脈が弱かったり、感じなかったりするときは足の動脈がつまっていると可能性を疑います。

 

血圧脈波検査(Ankle Brachial index: ABI)

手足の血圧を測定し、その比をみることで血行障害を評価する検査です。 検査精度が高く、費用や身体的な負担も低いことから最初に行う検査です。

脈の伝わる速度や、(足の血圧)÷(腕の血圧)から求められるABIという値から閉塞性動脈硬化症の有無を評価します。

足の血圧の方が腕よりも高いため、通常ABIは1以上ですが、足の血管が動脈硬化により、狭くなったり詰まったりすると、その先の血流が減少するため、足の血圧が低下し、ABIも低下します。

ABIが0.9以下の場合、足の血流が悪くなっていると考えられます。

 

下肢血管エコー検査

超音波を用いて血流の状態や閉塞の有無などを調べます。血管が石のように硬くなる石灰化が進んでいたり、脂肪が多くついていたりする場合などは評価が困難な場合もあります。

 

運動負荷試験

運動を行い、運動前後での変化を評価する検査です。
ウォーキングマシンの上を歩行するトレッドミル歩行負荷試験が最もよく行われています。

この検査の特徴は、運動前後のABIの変化、どれくらいの歩行距離で歩行障害(跛行)が起きるか、その程度はどれくらいかなどから、血流不足の重症度を客観的に調べることができることです。

 

下肢MRA検査

MRIという磁気を使った装置を用いて下肢の血管の状態を評価します。造影剤を使わずに全体像が評価できる利点がありますが、強い磁場を使うため、ペースメーカや除細動器を埋め込んだ患者さん、人工内耳を埋め込んだ方などには、原則としてこの検査はできません。

 

下肢CT検査

CT検査では造影剤というお薬を使って血管の内側に色味をつけ、動脈の走行や狭窄・閉塞部位を特定します。
また動脈瘤の合併や血栓の有無、血管壁の石灰化の評価も可能です。

一方で、造影剤(ヨード)アレルギーや腎機能障害などの既往症がある場合は、同検査での評価が困難な場合があります。

 

血管造影検査

カテーテルと呼ばれる管を手首や腕、足の付け根の動脈から挿入し、大動脈から骨盤内動脈(腸骨動脈)、大腿部動脈、膝部から下腿の動脈、足関節周囲の動脈を描出します。

細い血管における閉塞部位の特定や側副血行路の発達の状態も把握することが可能であり、治療方針の決定に重要な検査です。

 

治療

閉塞性動脈硬化症の治療には運動療法、薬物療法、カテーテル治療、バイパス手術があります。

 

運動療法

初期治療として、まず行われるのが運動療法です。血液不足の足への血流を増やす一方、血液中の酸素の利用効率を高めるのが狙いです。

運動療法は、「トレッドミル」と呼ばれるウォーキングマシンの上を歩行して行います。

「運動」することで、閉塞性動脈硬化症だけでなく、合併する高血圧症をはじめ脂質異常症、糖尿病などの管理にも非常に効果的です。

通院して行うのが困難な場合には、ウォーキングなどでも代用可能です。1回30分以上、週に3回以上行うのが理想的です。

 

薬物療法

薬物療法は足へ向かう血流を増やして症状を改善する一方、心臓や脳の血流もよくすることを目的として、抗血小板薬や血管拡張薬がよく使われています。
主なものはアスピリン(バイアスピリンなど)、シロスタゾール(プレタール)、チクロピジン(パナルジン)、ベラプロスト(ドルナー、プロサイクリン)、サルボグラレート(アンプラーグ)、リマプロスト(オパルモン)、エイコサペンタエン酸(エパデール)などです。

中でもシロスタゾールは、血管を広げることで間欠性跛行を改善することから最もよく使用されています。

 

カテーテル治療

運動療法や薬物療法で十分な改善が得られなかった場合には、血管に直接治療を行うカテーテル治療やバイパス手術を検討します。

カテーテル治療は、動脈が狭くなったり、詰まったりした個所に内側から風船を膨らませて血行をよくしたり、ステントと呼ばれる金属のパイプを留置して内側から補強します。

バイパス手術よりも少ない負担で行えるメリットがあります。

 

バイパス手術

バイパス手術は、狭くなったり詰まったりしたところに、ほかの部分から切り取った血管または人工血管を「バイパス」として取り付け、血流を確保する方法です。

カテーテル治療に比べ、患者さんの身体的負担は大きいものの、動脈の場所や血管の状態、病変の長さなどによってはこの方法が有利な場合もあり、こうした点も考慮し、どちらの方法がよいかを決定します。

 

まとめ

閉塞性動脈硬化症は、それ自体で亡くなったりすることは多くないと考えられています。

しかし、他の血管病(心臓・脳血管疾患)を合併する可能性が高く、これらの合併が原因で死に至る場合が多いことを忘れてはなりません。

この血管病とわかったら、足の動脈だけでなく、他の血管疾患がないかを確かめ、全身的な動脈硬化コントロール対策が必要になります。

足の病気をきっかけに生活習慣を見直し、全身の動脈硬化のチェックを行い、早期発見・早期治療により健康的な生活を続けることが重要です。

また、足の痛みから知らず知らずのうちに行動範囲が狭まってしまったり、散歩が面倒になったりしてしまう方も少なくありません。

きちんと検査や治療を行い、「1日でも長く、自分の足で歩く」意識を持つことが、人生100年時代を快適に過ごすための秘訣かもしれません。

 

© 2020 Inui pediatrics and internal medicine clinic

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