夜間や明け方に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」と苦しくなる、何週間も咳が続く、こんな症状で受診し、気管支喘息がみつかる方は少なくありません。特に気圧や気候が変化しやすい季節の変わり目は、喘息が悪化する方が多くなる時期でもあります。
今回は、気管支喘息について解説していきたいと思います。
気管支喘息とは
気管支喘息は、空気の通り道に炎症が続き、さまざまな刺激に気道が敏感になることで発作的に気道が狭くなることを繰り返す病気です。
気管支で慢性的に起こる炎症のために簡単な刺激が入っただけでも気管支の壁が腫れたり、粘液(痰)が分泌されたり、気管支の周りの筋肉が縮もうとしたりして気管支が狭くなってしまい発作が起こります。
そのため、炎症を治さない限りいつまでも発作が出現します。さらに、長く炎症が続いてしまうと気管支自体が硬くなって治療が難しくなってしまいます。
主な症状
気管支喘息に特徴的な3大症状としては
があります。
何度も「ヒューヒュー」「ゼーゼー」したり風邪をひいた後にせきが長引いたりするのは気管支喘息の可能性があります。
このほか、胸部の苦しさ、痰、胸痛などの症状があります。
症状は発作的に出ることが多く、1日のうちでは夜間から早朝にかけてひどくなることが多いです。また、運動がきっかけで発作が起きることもあります。
また、どんよりしたくもりや雨の日、台風などの低気圧の通過あるいは季節の変わり目で悪化することもあります。
症状が軽い場合には「そういえば季節の変わり目には咳が多かったがあまり気にしていなかった」といった程度のこともあります。
気管支喘息は診断が難しい
喘息の症状としては「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音(喘鳴)が典型的です。
しかし、喘鳴はあくまで狭くなった気管支を空気が通るときになる音ですので、それだけで気管支喘息と断定することはできません。
例えば、
などでも起きることがあり、しっかりとした評価が必要になります。
ただし、
などがある方はより気管支喘息が疑わしいです。
気管支喘息の検査
気管支喘息の検査には以下のものがあります。
呼吸機能検査
大きく息を吸った状態から、一気に息を吐ききる検査で、スパイロメトリーとも呼びます。気道がどの程度狭くなっているかを客観的に評価する方法で、喘息の診断や重症度、治療効果などをみるのに役立ちます。
呼吸機能検査では主に、
を評価しています。
喘息の方の場合、気道がせまくなっているため息を吐くスピードが遅くなります。そのため、1秒率と呼ばれる最初の1秒間で吐き出した空気の量が低下しています。
気管を広げるお薬を使う前と後で検査結果に変化があるかどうか確かめる方法もあります。
胸部X線(レントゲン)検査
レントゲン検査で喘息の評価はできませんが、喘息と同じような症状を持つ他の呼吸器疾患との判別や、肺癌や結核などが隠れていないか、といった評価をします。
呼気一酸化窒素(NO)検査
気管支喘息は、気道に慢性的に何らかの炎症が持続している病気です。気道に炎症を起こしている方では、気道の粘膜で一酸化窒素を作る酵素が増えるため、健康な方の呼気に比べて、一酸化窒素が多く含まれることがわかっています。
マウスピースを加えて息を吐き、その一酸化窒素の量から炎症の程度を確認することができます。
呼気中の一酸化窒素が22ppb以上であれば喘息の可能性が高く、37ppb以上であれば気管支喘息とほぼ診断できると考えられています。
日常生活で注意すべきこと
日本アレルギー学会が出している「喘息予防・管理ガイドライン 2018」では、喘息悪化の予防に効果のある対策として
などが挙げられています。
禁煙に関しては、喫煙者は非喫煙者に比べて7倍喘息悪化での入院が多いという研究結果もあり、非常に重要です。
喘息が起こる原因はさまざまですが、原因物質がわかっている場合は、極力それを避けるようにする必要があります。
ハムスターやモルモット、ウサギなどの部屋の中で飼っている、ペットが原因の場合、ペットの飼育をやめることで喘息が治ることもあります。
ほこりやダニ、カビなどが原因の場合には、ぬいぐるみやじゅうたんの使用をやめ、風通しをよくします。
こまめに掃除を行い、特に寝室や布団等に掃除機をかけることにより、症状が緩和される場合があります。
気管支喘息の治療
気管支喘息の治療としては
があります。
1. 発作時の治療
発作時の治療としては
があります。
喘息発作を起こしている時は、気管が狭くなることで苦しくなっていますので、気管を広げる薬を使って、症状を和らげます。
患者さんによっては、発作の時しか治療を行わず、発作が起きるたびに病院に受診される方も少なくありませんが、状態を悪化させてしまう恐れがあり危険です。
気管支喘息発作は起きれば起きるほど、気管が変化してしまい治療薬への反応が乏しくなるため、発作時の治療だけでなく、発作自体を起こしにくくする治療を行うことが重要です。
2. 発作自体を置きにくくするための治療(長期管理)
気管支喘息の長期管理治療は、気道の炎症や気道過敏性を和らげる吸入ステロイド薬と気管支を拡張するβ2刺激薬の2剤が同時に吸入できる配合剤を中心に行われます。
この合剤には現在、
シムビコート、レルベア、フルティフォーム、アドエア
の4種類があります。
それぞれ剤型や吸入回数が異なりますので、主治医の先生とよく相談し、ご自身のあったものを使用されるとよいでしょう。
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