内科医のできるまで(研修医編)|高崎市 乾小児科内科医院|アレルギー科・循環器内科(心臓血管内科)

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内科医のできるまで(研修医編)

2020.02.19

内科医のできるまで(研修医編)

 
 

医師の一般的なキャリアについて、前回、「内科医のできるまで(医大生編)
で医学部入学から医師国家試験合格までの道のりをお話ししました。

今回は医師免許取得後から研修医のキャリアパスについて説明していきたいと思います。

1. 研修医の実際

1-1. 保険医にならないとはじまらない

医師国家試験に合格すると「医師」を名乗ることができますが実務経験がゼロですし、何より2年間の初期臨床研修(いわゆる研修医生活)を終了しないと「保険医」になれません。

保険医とはなにかといいますと、保険医療を行う権限を持った医師のことです。
なんのことだかわかりませんね(笑)。

風邪などで病院にかかるときについて考えてみます。例としてここでは、診察と検査で1200円の医療費がかかったとします。

窓口で1200円を支払う必要があるかといえばそうではなく、3割負担であれば400円、2割負担であれば200円、1割負担であれば120円を支払い、残りは保険者(自治体や健康保険組合など)が支払っています。

これが保険診療です。

ちなみに保険医療で行う医療行為に関しては、この検査をしたらいくら、この処置をしたらいくらと、決まっており、どの医療機関で受けても費用は変わりません。

一方、美容皮膚科へ行って、脱毛をしたり、シミを取ったり、薄毛(AGA)治療やED治療、歯科矯正治療を受けたりした場合には保険の補助は受けられず、全額自己負担となります。

これを自由診療といいます。

費用に関しては、業界の相場はあるものの、値段が決まっているわけではないので、病院によって値段が異なります。

話が長くなってしまいましたが、要するに2年間の初期研修を終了しないと、保険診療を行うことができない(≒保険診療を行う医療機関で雇ってもらえない)ので、ほとんどの医師は初期研修を受けます。

 

1-2. 大学病院とそれ以外の病院どっちが多い?

内科医のできるまで(研修医編)

研修先としては、大学病院とそれ以外の臨床研修病院(大きめの規模の民間病院で基準を満たした病院)のいずれかを選択します。

大学病院は指導医が豊富で学術的な指導や幅広い専門家からの教育が受けられるメリットがあるものの、特殊な病気の入院も多く、研修医が最初に学ぶべき、とされる一般的な病気は民間病院の方が多く経験できることもあります(もちろん病院にもよりますが)。

また大学病院には医師が多くいるぶん、研修医一人当たりの症例数は民間病院に比べると劣る部分もあり、多くの症例からしたいと考える研修医が民間病院を選択するケースもあります。

また待遇面も民間病院の方が手厚い場合も多く、厚生労働省の公開しているデータ(上図)によれば、2018年では大学病院3500人に対し民間病院5500人と、近年は民間病院を選択するケースが1.5倍以上となっています。

 

1-3. 研修カリキュラム

内科医のできるまで(研修医編)

前回のブログでも書きましたが、医学部6年生時にある試験を経て、就職が内定した病院で国家試験合格後2年間の研修を行います。

図にお示しした通り、2020年4月から一部制度が変更になるものの、2年間の中で内科に6ヶ月、救急3ヶ月、地域医療1ヶ月配属となるのは基本的には変わりません。

その他新制度では外科、小児科、産婦人科、精神科の各科に4週配属が義務化となります。

選択科目は内科、外科など(通称“メジャー科”)に限らず、放射線科や皮膚科、耳鼻科、眼科など(通称“マイナー科”)も含まれます。

義務付けられている科目以外の選択は病院にもよりますが、基本自由なので、3年目から専門にする予定の科を中心にカリキュラムを組んだり、まだ決めかねている数科を再度選択したり、自分の幅を広げるためにあえて今後選択予定のない科を選択したり、本当に人それぞれです。

業務内容は…乱暴な言い方をしてしまえば、慣れるまでは「お兄さんお姉さん(先輩医師)のおつかい」といったところでしょうか。

学生時代と異なり、採血や検査、処方などを行うことができます。
ただし、どのような病気を想定しているかでやることは変わってくるので原則指導医の監督のもと行います。

たとえば薬の処方は、研修医の独断では行えず、必ず指導医の指示が必要となります。

指導医は病院にもよりますが、キャリア10−20年目ぐらいの医師が担当することが多いかと思います。

と、書きましたが、医師として現場にたって初めてわかることはたくさんあります。

学生時代は、試験問題を見て「Aという病気にはどんな検査が必要か→B」と、選択肢を選ぶ作業(あるいはその知識の詰め込み)をするだけでした。

しかし実際の現場では、Bという検査がどういうものか患者さんにリスクと費用負担なども含め説明を行い、場合によっては署名を頂き、検査によっては物品の手配をし、検査室の予約を取り、(病棟などから来る様々な電話の対応に追われながら:指導医が検査で手が離せない時の電話対応も研修医の仕事だったりします)検査を行う必要があります。

Cという採血が検査に必要、と問題で選んでいただけだったのに、
現場では、採血が必要なことを患者さんに説明し、時間外だったり、すぐに結果を知りたかったりする場合には、採血の道具を準備し、自分で採血します。

すると、「採血何回もしているとだんだん血管が硬くなってきてしまうことがあるんだな」とか「自分の技術が未術なせいで何回も採血して患者さんに辛い思いをさせてしまった、早く上手くなりたい」とか

教室で机に向かっていただけでは感じえない(もちろん学生実習でも多少現場は経験しますが当事者となるとまた感じるものが違ってきます)経験をしながら学んでいきます。

「ほう・れん・そう」は徹底しなさい、といった社会人としての常識的なことから、書類の書き方、プレゼンの仕方など、実務に関するスキルは医療業界に限ったものではないような気がします。

 

1-4. 配属科によって生活はいろいろ

内科医のできるまで(研修医編)

さて、研修医の生活は、どの科の配属(いろいろな科を回るのでローテートといい、研修医のことをローテーターと呼ぶこともあります)になっているかで大きく異なります。

おおまかにいえば、外科系は朝早く、手術がない日は早めに帰る。内科系は会議(カンファレンス)がなければ朝は比較的ゆっくり、日中に出た検査結果を踏まえて午後や夕方、場合によっては夜から会議が始まったりすると帰るのが遅くなることもしばしば、だったりします。

内科6ヶ月が必須と書きましたが、内科の中にも循環器(心臓)、消化器、呼吸器、神経、内分泌・代謝、アレルギー・膠原病、腎臓、血液と専門科が色々とあり、その中からいくつかを選んで(受け入れ科の都合もあり、人気が集中した場合には抽選になることも)カリキュラムを組みます。

選択科目は研修病院によっては、提携している他の研修病院での研修を行っているところもあります。

学生時代と異なり、実際に働く内側からその科の生活を垣間見ることになるので、

「この科は研修医として勉強するのはいいけど、専門にして続けていくには合わないな」

「この科は業務内容も生活スタイルも自分に合っている、憧れの指導医とも出会い、目標がはっきり見えた」

など、研修後の専門科選択を見据えながら研修を行います。

研修医も指導医も経験した立場から回想しますと

個人的には医学部7年生気分で始まった研修医1年目は、社会人としての生活自体に慣れるのに非常に苦労しました。

きちんと決められた時間に出勤し、なれない業界用語を一つずつ覚え、めちゃくちゃ忙しそうに走り回っている指導を捕まえて、恐る恐る逐一確認を取り、指示を出すのが遅いと現場から怒られ…

なにもできないどころか、迷惑ばかりかけてしまっている自分への自己嫌悪と戦いながら、1日も早く一人前になることを目指し、勉強する日々でした。

配属当初はそこまで興味を持っていなかった科も、行ってみればどこも魅力的でした。

医師の専門科はよく部活動に例えられるのですが、その科ごとのキャラクターがあり、個人的な見解により乱暴に表現しますと

・外科医は体育会系でノリがいい。ただ、細かいところは気にせず大雑把な性格な人も多い。

・内科医は真面目で理屈っぽい。内科の中でも業務内容が忙しい傾向にある循環器、消化器はやや外科よりでノリよくアクティブな面もあるが、それ以外の内科の医師の方がおおらかで優しい性格の人が多い。

といった違いがあります。

各科で生活リズム、働いている人の雰囲気、業務内容が大きく異なるため、数ヶ月ごとに繰り返す移動のために順応するストレスが毎回あり、慣れた頃には移動、といった感じでした。

受け入れる指導医側からすると、こと大学病院においては学生(4年生、5年生、6年生)や留学生などの指導もする傍ら、数ヶ月ごとに変わる研修医がどんな人間か、どこまで仕事を任せられるか、を見極める作業も一苦労でした。

実力に見合わない独断や指導医の指示が十分に通らない研修医は、それまでにローテートした他科から「要注意」と情報が回ってくることもあります。

 

1-5. 専門科選び

内科医のできるまで(研修医編)

研修2年目になってくると、どの専門科を選択するかだんだんと絞られてきます(絞れなくても何らかの進路は決めないといけない)ので、各科説明会(部活動の勧誘に近い雰囲気がある場合もあります)を行います。

最初の2年間の研修を行った病院を選択するもの、最初の2年は一般病院で研修を行い母校の医局に入局をするもの、専門科で全国的に有名な病院に入職するもの、後期研修という形でもう少し総合研修を続ける(病院によっては2年でなく3年でカリキュラムを組んでいる病院もある)、などが一般的なキャリア選択になりますが、人それぞれです。

 

2. 専門領域の選択

2-1. 自分の好きな科を選べる

一般企業ですと、製品開発をするつもりで入職したのに、配属先は営業だった、みたいなことがありますが、医師の世界では専門科は自分で選択できます。

ちなみにアメリカでは専門科ごとに人数が決まっているため、試験の成績や指導者からの評価が低かったりすると、希望した専門科を選ぶことができないため、日本とはずいぶん違います。

また少数ではありますが、入職してみたらイメージと違ったため、科を変える先生もいますし、希望の業務内容と異なった場合には上司に強く要望を出す(ある種、職人の集まりの様相もあり、自己主張が強い人は一般企業よりも多い気がします)人も多いです。

就職先はいくらでもあるので、条件やイメージが合わないとスパッとやめて別の職場に行く人も少なくありません。

蛇足を承知でさらに付け足すと、「専門科」としてのトレーニングの1つの目安として「専門医」があるのですが、全員が全員「専門医」を目指しているとも限らず、

初期研修を終えた後は、非常勤勤務(俗にバイトといわれています)を週に数回行いながら子育てに勤しむ、企業の産業医(社員の健康管理を行う仕事)として働く、研究職に赴く、海外留学する、などの選択もあります。

後述する専攻医になるからといって専門医を取得する意思ばかりではない、ということなのですが、話が長くなるのでこの話は次回お話しできたらと思います。

 

2-2. 専門医を目指す医師の比率はどの程度?

2018年度より専門医を目指すための仕組みが大きく変わりました。

いままでは最初の2年を初期研修医、その後の数年を後期研修医としていましたが、これを廃止し、専攻医と位置付けることになりました。

2019年でみてみると2017年に初期研修に内定した医師が9023人で2019年に専攻医に内定したのが8615人(日本専門医機構公開データより)ですので、ほとんどの医師は専攻医に進んでいることがわかります。

 

2-3. 主な就職先

内科医のできるまで(研修医編)

本題に戻ります。
専門科でのトレーニングを目指す場合の就職先としては、おおまかに総合病院の専門科への所属、専門病院への入職などがあります。

総合病院の中でも大学病院の医局に所属する場合と、医局に所属せず市中病院の専門科自体に属する場合があります。

 

2-3-1. 大学病院

大学病院の医局に入職した場合(これを入局といいます)、医局の関連病院(医局からの出向者がおり、多くの場合は部門の責任者が医局出身)などへ出向しながらキャリアを積んでいくことになります。

メリット:多くの指導医がいる場合おり、いろいろな人の目があることで落ちこぼれになりにくい。同窓の医局出身者同士は、業界内で強いつながりとなる。 医学博士をとれる可能性がある。

デメリット:教育、指導を行う機関のため、会議が多く、拘束時間が長い。給料は一般病院に比べると低い。医局人事により本意ではない異動がありうる。

 

2-3-2. 市中病院

大学病院以外の病院のことを総称した呼び方が市中病院になります。
市中病院の専門科に入職した場合は、そのままその病院にい続けることもできますが、より多くの経験を積むために数年ごとに新しい就職先を探していく必要が出たりします。

市中病院で働いている医師には市中病院に直接入職した医師以外に大学病院など他の病院から出向している医師もいます。

市中病院の中には複数の系列病院を持っている病院(国立病院機構系列、赤十字系列、徳洲会系列やIMSグループなどのグループ病院など)もあり、こういった病院はグループ内で移動があったりします。

メリット:自分の行きたいところで仕事ができる。給料は大学病院より高いことが多い。

デメリット:上司の得意な分野以外のトレーニングが積みにくい。キャリアを積むために職場を転々とする可能性もある。

 

2-3-3. 専門病院

総合病院ではなく特定の専門領域に特化した専門病院に入職しトレーニングを行う、という選択肢もあります。

私の専門とする循環器でいえば、国立循環器病研究センターや心臓血管研究所附属病院などがそれに当たります(こういった病院には市中病院には5、6人程度である専門領域の医師が何十人もいます)。

ただし、2018年から内科医のトレーニングに関しては制度が変わったため、3年目からこのルートを選択するものは大きく減った、と思われます。

新しく制度を踏まえた専門医としてのトレーニングがどのようなシステムになっているのかに関しては次回お話ししたいと思います。

 
 

© 2020 Inui pediatrics and internal medicine clinic

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