「足の付け根が腫れてすごく痛い、痛風じゃないですか?」 「健診で尿酸値が高いといわれたのですが」
といわれて外来に来られる方は数多くいらっしゃいます。
治療の必要性についてのお話は「痛くないから大丈夫?尿酸が高いといわれたら」という記事を書いておりますのでこちらをご参照下さい。
尿酸値がどの程度か、痛風関節炎(痛風によって関節が炎症を起こして腫れ、痛みがある状態)があるかどうか、他の病気の合併があるかどうか、によってお薬(薬物治療)をはじめる基準が異なります。
2019年に改定された最新版「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」の治療アルゴリズムをお示しします。
の場合は、お薬が推奨、となっています。
痛風は以下のような特徴的な症状があります。
高尿酸血症の状態のままでいると、ある日突然、痛風発作に襲われます。痛風発作は夜中から明け方に起きることが多く、痛みのピークは2~3日間続きます。
その後、2週間以内に痛みはなくなります。しかし、適切な治療を受けて生活改善しないと、痛風発作を繰り返すようになります。
そして、だんだん発作の間隔が短くなり、やがて常に痛みや腫れがある状態になります。繰り返し痛風発作が起きる部位では、骨や関節の破壊や変形があらわれるようになり、関節周辺や皮下には痛風結節と呼ばれる、こぶのようなものができます。そして、さまざまな合併症が起きてきます。
痛風の治療は、痛風関節炎(痛みがあって腫れているとき)の治療と、その背景にある高尿酸血症(尿酸値が高い)の治療の2つがあります。
痛みがあって腫れているときは、まずは炎症を抑える治療が必要になります。
尿酸値が高い場合には、生活習慣の改善や尿酸値をさげるお薬による治療を行います。
尿酸値を下げる治療により痛風関節炎を起こしにくくし、高尿酸血症に伴う臓器障害(尿路結石、痛風腎)を予防することができます。
痛風発作を起こしたら炎症を抑える治療を行う必要があります。
腫れている部位は高めに保ち、冷やすとよいでしょう。
その上で、できるだけ早く医師の診察を受け、必要に応じて痛み止めのお薬を使います。
痛み止めのお薬の基本は非ステロイド系抗炎症薬:NSAIDsになります。
頭痛止めや解熱剤などに一般的に使われるお薬でロキソニン®︎やイブプロフェン(イブ®︎の主成分です)などが有名です。
発作の初期や発作の前触れに気づいたとき(予兆期)にはコルヒチンというお薬を使うこともあります。
尿酸を下げるお薬には、
があります。
(1)尿酸の排泄を促す薬(尿酸排泄促進薬)
ベンズブロマロン(ユリノーム®︎など)、プロベネシド(ベネシット®︎など)があります。尿酸の排泄が低下している場合に有用です。
(2)尿酸ができるのを抑える薬(尿酸産生抑制薬)
尿酸産生が過剰型なタイプの高尿酸血症に使用します。
尿酸生成抑制薬としてはアロプリノール(ザイロリック®︎、アロプリノーム®︎など)に加え、2011年よりフェブキソスタット(フェブリク®︎)、2013年よりトピロキソスタット(トピロリック®︎)が使用可能となりました。
お薬による薬物治療とともに重要であるのが生活習慣の改善で、ガイドラインでは高プリン食(肉類・魚介類など)を極力控えること、十分な水分摂取(尿量2,000mL/日以上)、アルコール(特にビール)の制限、軽い有酸素運動などが推奨されています。
アルコール摂取に関しては、低プリン発砲酒でも尿酸値は上昇するものの、その幅は通常のものよりも低く抑えられることが報告されていますので、どうしても飲みたい場合は、こちらにするとよいでしょう。
なお、サウナ+ビールの組み合わせは、脱水+プリン体摂取のダブルパンチでより大きく尿酸値が上昇するという報告もあり注意が必要です。
ヨーグルトや牛乳は、尿酸値を上げにくくする働きがあるとされています。乳酸菌が消化管からのプリン体の吸収を抑え、腸管内でプリン体を取り込み、増殖のための栄養源として利用している可能性が指摘されています。
尿酸は腎臓から尿中へ排泄されるので、水分を多めにとることがすすめられますが、心臓病や腎臓病などがある場合は医師に相談が必要です。
過度の運動(無酸素運動)は血清尿酸値を上昇させます。個人の運動能力を上回る運動、過度の筋肉強化運動や瞬発力を要する運動は高尿酸血症の予防という観点からは好ましくありません。
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